日誌

サンキューの人(2)

実家でA6版大のノートブックを見つけた。ぺらぺらと無造作にめくっていて、2008年4月分の家計簿が始まる前の、妙に余白の目立つ左ページで手が止まった。24行の横罫ノートのほぼ中央左端に、たった3行がポツンとつづられていた。きれいで毅然としたペ…

本棚整理

ああ、これ、いい本だったなぁとは思うのだが、具体的にどこが、どうよかったのかが思い出せない。情けないのだけれど、そんな本が意外と多いことに気づいた。仕事部屋の大掃除で最初に手をつけた本棚でのこと。 たとえば、詩人・長田弘著『一人称で語る権利…

積極的休養の副産物

あれれっ。休憩時間をへて泳ぎ始めたら、自分のイメージ以上に水面をすううっと滑るように進んだ。両手をまっすぐ伸ばして顔を水面に潜らせるとき、顔を水面より35度から40度下げる程度で平泳ぎをはじめたときだった。なにより泳ぎが軽い。そのときはじ…

生涯いじり飽きない玩具

「会社って何だろうって考えたらですね、結局は自分の心の中にあるもんだなって思ったんです。それは社員たちの心の中にもあるだろうし、わたしの心の中にもあって、それぞれの『会社』は違っていて当たり前でね」 よく日焼けした顔を健やかにほころばせなが…

お米の研ぎ水は鉢植えへ

お米の研ぎ水は、栄養価が高いゆえに、生活排水としてそのまま流してしまうと、環境を汚してしまう。 先日、永田さんにお会いした際、そのスタッフの方から聴いた話だ。一部の自治体では、それが極度の悪臭や汚水として問題化しているため、それを流さず、鉢…

永田照喜治さんとの再会

家の軒づたいに這うように伸びる、赤紫色のブーゲンビリアがなつかしかった。季節は11月、場所は沖縄ではなく、静岡県浜松市。約8年ぶりで永田照喜治さん宅を訪れた。水をあまり与えないスパルタ農法で、糖度の高い野菜を育てる永田農法の創始者。かつて…

義をまねることから

「彼が渋るからね、アラカワさんは金儲けしようと言ってるんじゃなくて、あなたの理念や志を本という形にして若い人たちに伝えたい、残したいと言ってるんだよって、そう言っておきましたから。そしたら、まんざらでもないようだったよ」 道路沿いの窓から雨…

「君」と「様」から考える

ブーメラン効果という言葉は、因果応報めいたマイナスのニュアンスで語られることが多い。でも、人によってはそうじゃないこともある。 先日、ある経営者の方と夕食をご一緒した。老舗料理屋の坪庭が見渡せる奥の部屋でいただいた松阪牛も美味しかったが、そ…

『海をわたる被爆ピアノ』出版記念祝賀会(in 広島)

広島市内のホテルで100人をこえる人たちに集まっていただいた。出版社探しが難航した分、一冊になっただけでも喜ばしいことだけれど、これだけの人数の広島の方々に祝っていただけるなんて、光栄なこと。 笑いあり、涙あり、著者である矢川さんらしい気さ…

電車は止まらない(2)

佐野さんが、昔日のハリウッド俳優である、フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースの、名コンビぶりを書いた「人間相性よ」というコラムがある。2人の相性の良さを、大人になってから知った佐野さんは、 「相性がいいという事は人わざを越えるものなの…

電車は止まらない(1)

薄墨色の車窓の風景が、叩きつける雨に白くけむっている。 電車は京都方面にむけて走っている。日曜の夕方、車内は静まり返っていて、電車のエンジン音と、線路を疾走する音だけが重たくひびいている。実家の最寄駅まで車で送ってくれた両親の、とりわけ母親…

42・195Kmへの距離感

かすみがうらマラソンから2週間がすぎたことになる。 あれから疲労回復もかねて、何度か泳いではいるが、一度も走っていない。このまま1カ月、いや3カ月ぐらいなら、あっと言う間かもしれないなと思う。 あれだけ劣等感にまみれ、途中棄権の誘惑に何度か…

かがやくライラック

ベランダのライラックの花びらが、ピンクに染まりはじめた。朝食後、春めいた日差しに映えるその枝先を二本切って、ダイニングテーブルと壁掛けの一輪ざしに活ける。おのずと心が弾んで、デジカメでもパチリ。今度はむしょうに散歩がしたくなる。

上海取材(1)TV「スーパーファミリー」観覧記(前編)

上海浦東国際空港について数時間後、ぼくは地元テレビ局の生放送番組の客席にいた。「スーパーファミリー」というその番組は、今年5月に開催される上海万博に向けた、素人のど自慢大会。中国内の少数民族や香港など各地区の予選会を勝ち上がった参加者たち…

はじめての給水ボランティア

つ、つっ、つっめたい。 午前9時半ころ、きゅうに強い横なぐり雨がふきつけてきて(あられ混じり?)、マラソンシューズがずぶ濡れに。3枚はいていた靴下にもしみて、足裏の温度が急降下した。おもわず、ひとりで地団駄(じだんだ)をふむ。そんなことでは…

えらそうな「漢字」

小学校5年生でも読めて、大人の胸にもときどき刺さる。 そんな原稿をめざして、あくせくしている。今回の大きな発見は、自分がどれほど漢字熟語に今まで逃げていたのか、ということ。 漢字熟語は、それ自体がとても偉そうだ。 いかにも「私はぜったいに間違…

「かばんはハンカチ」、17日(土)付け東京新聞で紹介

川田修さん著『かばんはハンカチの上に置きなさい』(ダイヤモンド社)が、東京新聞16面の暮らし欄で紹介されました。ありがとうございます。金曜日夜、東京駅丸の内口のオアゾ丸善1階エスカレーター裏の話題本コーナーに、2冊正面積みで置かれていまし…

謙虚な言葉の使い方

「私の話に一緒に泣き笑いしてくれて、私にはない視点を教えてもらえて良かったです。最初は私が自分で本を書こうと思っていましたが、荒川さんの力をお借りすることに決めました。どうぞ、よろしくお願いします」 身に余るお言葉をありがとうございます、と…

20年ぶりの再会

変わらないな。 龍さんも変わらないですよ。 とっさに固い握手をしながら、互いにそう言い合うと頬がゆるんだ。一方で、20年ぶりなのに、おれは変わってないのか、という一抹のさみしさも覚えた。・・・ただのないものねだりか。 43歳の割に彼は若い。体…

一方的に「まいった」話

えっ、マジかよ。仕事をする気がいっぺんに失せた。朝の散歩と体操を終え、今年2回目の熱いお茶をすすりながら朝刊をめくり、さあ、原稿書こうとパソコンを立ち上げたときだった。 中村獅童って、今度は黒木メイサと付き合ってるみたいよ。・・・完全にカブ…

鯵(あじ)の開きと水

なぜだと思いますか。 JR沼津駅前から乗ったタクシーの運転手さんがそう言った。魚が新鮮だから、ですか?とぼくがたずねると、それもありますね、この辺は沼津港から揚がったものが多いですから。でも、もうひとつ理由があるんですよ、思わせぶりに彼はそう…

朝型生活へ転換中

きっぱりと晴れわたった、少し高い空。 まだ夏の名残りをのこす強い日差しと、遊歩道の両脇につづく植物の緑の照り返し。 湿気をふくまない清涼感のある風と、ゆれる木槿(むくげ)の白い花びら。 そんな光景や匂いを胸いっぱい吸い込んで、近所の遊歩道を散…

夏の大豆畑

都内から電車をのりつぎ、約2時間半。千葉県東部の八日市場まで取材で出かけた。場所は、都内より深みのある青空の下、高さ20センチ前後の緑葉がゆれる大豆畑。ここで間引きと除草、実になる部分の摘心作業。 タオルを頭にまき、ジャージと作業用に買った…

お願いされて見えてくる自分

質問するとは自分を語ること。小林秀雄のそんな言い方を少しまねると、他人からお願いされたときに自分が見える。 まず、カメラマンの友人に、室内での人物撮影でのノウハウを電話で尋ねた。その友人は、丁寧に教えてくれたあと、その日の夜にメールでさらに…

ひそやかなマイブーム

ハマッてる。ほぼ、毎食後の5分から、ときに30分。至福のときだとつぶやくと、ずいぶん安上がりねと奥さんが茶化す。し、しっ、至福に値段の高い安いはないでしょうよっ! リビング隣の和室に、うちはソファ代わりにソファベッドを置いている。 で、ご飯…

お祝い

週末、ペルー料理づくしで、わが家でささやかなお祝いをした。 最初の本で取材した子が、この不景気に就職して、晴れて正社員になった。中学三年生の2学期から学校に行かなくなり、中学はなんとか卒業したものの、ひきこもり生活は数年間におよんだ。その頃…

芦崎治氏出版記念パーティ

今、話題の『ネトゲ廃人』の出版記念パーティーがあり、柄にもなく、赤坂のこじゃれたイタリアレストランに行って来た。しかも貸切とはいまどき豪勢な! ちなみに、「ネトゲ廃人」とは、ネットゲームに依存して廃人同然になる人たちの略称。尊敬する先輩、芦…

深夜のストレッチ

入浴後のストレッチが、すっかりお気に入り。 ジョギングの疲労回復と、身体の柔軟性を高めるために始めたのだが、今はむしろ、その空っぽな時間がとても心地いい。FMラジオをぼんやり聴きながら、深く呼吸して、各部の筋肉をゆっくりと伸ばす。今夜は、J…

神戸とマスクと、なぜかマスカラス

「神戸周辺が何かと騒々しいようやけど、勤務先のほうは大丈夫か」 「過剰反応やな。でも、うちの子供も学校1週間休校や。取引先からは『マスクして来てください』っていわれるけど、どこも売り切れやし、まいるわ」 「そりゃ、大変やな。喜んでんのは子供…

吉岡徳仁VSナガオカケンメイ対談

デザインや機能より、デザインする気持ちの優先順位の高さ。自分のアウトプット以上に、それを受けとる側の驚きや感動に重きをおく姿勢。話すのが苦手だという吉岡徳仁さんの話で、もっとも胸に残ったのは、そのふたつ。 あと、プレゼンが苦手で、ある和菓子…