視点

考える脚(2)〜一見無関係とも思えるディテールにこそ 

じつは、皇居での練習中に直感が働いたのは2度目。 東京マラソン前、場所はちょうど半蔵門からの下り坂だった。身長185センチはありそうな男性が、軽くぼくを抜かした。彼はその背中で、まるで両肘をブランコのように振ってリズムをとっていた。そのくせ…

考える脚(1)〜速く歩くように走る 

先の週末、皇居を走っていたとき。 すっと抜かされた男性ランナーの前足の着地に目をうばわれた。まるで摺(す)り足のように足を低く出し、足裏全体を地面にペタンとつけるかのようなステップだった。金髪の外人風の後ろ姿で、まるで速く歩くような走り方。…

本質は一文で足りる〜東京新聞ラブ❤ 

棚からぼた餅、とはこのことだ。東京新聞3月1日付け夕刊の、普段は読まない絵本の紹介記事をなぜか読んでいた。そして、この言葉に出くわす。 生きているのはゆかいで寂しく、うれしくて悲しいことですね 前後の文脈とは無関係に、この一文が目に飛び込んで…

違う鏡に映ると、同じものが違って見える、そして違いが見える 

周縁(あるいは少数者)から見た方が、その中心(あるいは多数派)はよく見える。 漠然とだけれど、ぼくは今までそういうスタンスで、仕事をしてきた。ただ、先日、愛読する東京新聞のインタビュー記事を読んでいて、志向そのものは似ているけれど、まるで違…

「安直」の代償〜見えない毒の行方 

新聞記事のスクラップを整理していて、ふと手が止まった。 大阪府知事選挙についての東京新聞の論評記事で、地方における政党の機能不全を指摘していた。 (中略) 政党は有権者の声をすくい上げて政治に反映させるだけではなく、政治の担い手を供給するとい…

日経ビジネス今週号が面白い〜本当の大人がいない国 

まず巻頭の辰巳芳子さん(料理研究家)の言葉がガツンとくる。 食は命に関わることです。政府には命を愛惜し、長期的な視点で農業政策を立ててもらいたい。それがないから、お米の値段を上げたり下げたりして農業者の振り回す。だから農業をやってくださる方…

道路財源の暫定税率維持に横たわるインチキ〜「(廃止になれば)ガソリン代が安くなる」は、まるで本質的ではない 

国会で話題の、道路財源の暫定税率問題に関連して、面白いディスクールを見つけた。 NBオンラインの山崎義世氏の「戦後復興期の財政のあり方から、今こそ脱却を」だ。知らなかった、この問題をさかのぼると、田中角栄に突き当たるなんてね。同時に、当時暴…

身体の痛みをこそ抱きしめる〜少々、東京新聞ラブ❤

「まぁ、マラソンを完走したら、まちがいなく身体はボロボロでしょうね」 治療院のM先生が苦笑いしながら言う。・・・べつに走り終わってボロボロになる分には構わないんですけど、走る前にボロボロになるのは避けたいんですよねと、こちらも苦笑しながら答…

ポップ義足コレクションとボブ・サップ 

この写真、いいでしょう?「うわぁ〜、コレ、いいですねぇ」と思わず声をあげてしまった。 今日取材でうかがった義肢装具士の方に、施設内を案内していただいたときのことだ。これは7歳から10歳だったかな、育ち盛りの男の子で、身体の成長に合わせて義肢…

片山善博(前鳥取県知事)の現場洞察力〜こういう人こそ、大学ではなく、政治の現場に必要だ 

「日経ビジネス」は、最近、定期購読者がアクセスできるネットがかなり充実している。片山氏の「官が頑張れば頑張るほど、地方はダメになっていく」という記事は、じつに端的に中央と地方行政の<負の連鎖>の構図が指摘されている。まさに、骨の髄まで「親…

東京新聞ラブ❤〜作家・高村薫さんの指摘(17日付け夕刊・社会時評) 

同紙の「ワーキングプア一千万人の衝撃」と題する社会時評。ここで、高村さんは年収200万円以下の労働人口一千万人について触れ、「勤労者に必要最低限の生活を保障する社会福祉の基本が、この国には欠けていることも意味している」と指摘。その上で、き…

NHK日曜美術館「日本画家・堀文子」〜5ミリでも昇りながら死にたい 

おおざっぱに言うと、世の中には2通りの人しかいない。 舌打ちしている人と、何かを求めて動いている人。いろんな人に会い、その話を聞く仕事を20年近くつづけてきて、そう思う。幸運にも、ぼくが会ってきたのは後者の人たちが多かった。 今朝、日曜美術…

自分を見る 

こういう言葉に、新聞で出くわすとは思わなかった。 絶えず外からの刺激に応じるような状況じゃなく、 時には自分の内側に視線を向けられるところに 自分を置いたらいい。 自分の部屋でもいいし、静かな時間に道を歩いたっていい、 旅でもいいんですよ。 人…

あなたの顔は大丈夫ですか? 

花がその蕾をひらく前の頃が好きだ。今にも音をたてて弾けそうな力感をおぼえる。今日、都内のある農園に出かけて、あれに似たエネルギーを感じた。 まずは畑と野菜のコントラスト。写真ではうまく写せていないが、関東ローム層の少し赤味の強い茶色い畑の土…

NHK総合「人生の歩き方」見城徹〜圧倒的なる放熱上手 

角川書店時代、見城さんは、人気作家の五木寛之が書いたエッセイやら小説を片っ端から読んで、逐一感想の手紙を書き送ったエピソ―ドが秀逸。だんだん気持ちが萎えてきた15通目に、五木夫人の代筆でお礼のハガキが届き、25通目の手紙で、「ぜひお目にかか…

佐野眞一さんの言葉

「ノンフィクションは固有名詞と動詞の文芸である。形容詞や副詞の修辞句は時を経て腐るが、名詞と動詞は腐らない」(佐野眞一著『私の体験的ノンフィクション術』)

今日のイチオシ〜柳美里と養老孟司の言葉 

ひさしぶりに、ネット上で面白い言葉に出くわした。「日経ビジネスエクスプレス」web上の、「柳美里、養老孟司と語る」。しゃべらない昆虫を通して、現代を照射する二人の言葉はとても鋭敏。「現代社会は見るな、触るなと言っているように見える」、「みんな…

「身体に楽なことは身体に悪い」 

腰を痛めてから、座るものに敏感になった。いままで持ち得なかった感覚だ。 たとえば、現在、仕事場の椅子はリビング用の背もたれのついたものを使っている。奥まで深く腰掛けてパソコンを打つ分には、まるで疲れなくなった。バランスボ―ルや、リクライニン…

祝!最後っ屁の福田内閣 

たぶん、こういうのが最後ッ屁。 ジリ貧自民党も、なかなか洒落っ気がある。でも、総裁選に群がるワイドショーで、福田首相の、3年前の知らばっくれ年金未納問題を取り上げたところは、あったのかしら?まっ、何事も面白ければいい人たちだから、サラリ―マ…

見えない身体(7)〜寂しきリバース(rebrith)

感覚 見るもの、聞くものがほとんど意味不明というのは、海外旅行の不安であり醍醐味だ。 21歳で韓国ソウル市に1年間留学した際、ぼくは開き直って、まるで赤ん坊に戻ったような自分を、めいっぱい面白がることにした。なにせ、生活開始1週間あまりで、水ぼ…

見えない身体(6)〜自分のヘンな歩き方に気づかないオレ

「いやだぁ、びっこ引いてるじゃないの」 近所に買い物に出かけた際、奥さんからそう言われた。自分では普通に歩いているつもりなのに、まだ無意識に右足に体重を乗せるのを避けていたようだ。自分ではまるで気づかなかった。2週間前からついたのだろうクセ…

見えない身体(5)〜意識が筋肉を傷めるという悪循環 

ズドーンという感覚が右腰に拡がる。 何度目かの針を打たれたとき、初めてそんな衝撃をおぼえた。すると不思議なことがおこる。筋肉がしこっていて、Hさんが何度揉んでくれてもなかなかほぐれなかった部分が、嘘みたいに柔らかくなった。2度目の通院でのこ…

見えない身体(4)〜生活改善 

最初の治療後、いくつか取り組んだことがある。 まず、仕事場の椅子をリビングの固い椅子に変えた。室内でスリッパを止めて裸足で歩くようにもした。H氏から、リクライニング機能のついた椅子や、身体が沈むようなソファほど腰痛に悪いものはない、そう聞い…

見えない身体(3)〜筋肉と神経は表裏一体 

つづいてマッサージが左腰側にうつると、右ほどではないが、腰骨の上あたりにもかなりの張りがある。 「右側の過緊張に隠れていて、自覚がなかったんでしょうね」 また、Hさんがぽつりと言う。痛めた右腰側に意識が集まるせいで、左側の張りに気づかない。人…

見えない身体(2)〜夏の疲れと冷えに蝕まれる 

右腰の上辺りを痛めた2日後、ぼくは知人Kさんご夫妻の紹介で、マッサージ師Hさんのマンションを訪れた。 突然の痛み以来、右足に体重をかけるのが怖くて、もっぱら重心を左足にかけ、自宅でも壁に手をついて身体を支えないと歩くのも覚束ない状態。仕方なく…

見えない身体(1)〜激痛と脂汗 

禅問答を気どるつもりはない。 ただ、身体には見えている部分と見えない部分がある。そして見えない部分を唐突に照らしてくれるのが、痛みだ。痛みを通して見えてくる身体の内側というものがある。それは身体のクセであったり、日頃の不摂生であったり、寄る…

食材のもつ性質と調理のロジック〜NHK「おはようホットモーニング」から 

たとえば、キンピラゴボウを作るなら、材料のゴボウはまな板の上で、ころころと転がしながらけさ切りすると、柔らかくて味のしみた一品ができる。それはゴボウが頭から根っこにかけて繊維質が真っ直ぐに走っているから。 それを繊維質に沿って縦にけさ切りす…

ジョギング中の脳にアルファ波が出ている?! 

走っている最中、時折、ある考えやキーワード、あるいは俳句や短歌がうかぶ。10日の一句もそうだ。そういう体験が面白くて、たまにここにも書いている。10日も走りながら、コース沿いの桜並木で蝉の声があまりに強烈で驚き、ある瞬間、その情景を空の上…

NHK阿久悠さん追悼番組〜「地球の男にあきたところよ」の凄み

「壁際に寝返りうって 背中で聴いている やっぱり おまえは出ていくんだな」 沢田研二のヒット曲『勝手にしやがれ』の冒頭の歌詞だが、わずか2行で、その情景と2人の関係が理解できる。男女の別れを歌った曲で、これ以上に鮮やかな書き出しをぼくは知らな…

「ブルドッグソース完勝のウソ」〜日経ビジネスオンライン記事から 

少なくとも、「東京新聞」のブルドッグソースの買収防衛策をめぐる、スティールパートナーズとの法廷闘争は、ブルドッグ側の完勝、という見出しだったと記憶する。東京高裁が同社の防衛策を容認したからだ。 しかし、日経ビジネスオンラインの上のタイトル記…