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共感できないからこそ、理解しようと思考する〜「今、何かを表そうとしている10人の日本と韓国の若手対談」(クオン)

日本で韓国文学を出版するクオンによる、日韓文化人対談集がとても読み応えがある。本質的な部分で共鳴と共感があり、同じ時代に何かを表現する人たちの吐息と熱が行間の隅々に息づいている。韓国の映画や文学、建築や写真などを日本人との対談を通して発信…

著者の「わおっ!」に耳を澄ます だから、また行きたくなる。 伝説の外資系トップ営業が教える「選ばれるサービス」の本質作者: 川田修出版社/メーカー: ダイヤモンド社発売日: 2018/07/05メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見…

小さなことからコツコツと拙著紹介

(先週発売号『プレジデント』誌の新刊欄)

 はみ出してナンボ 中原一歩著『小林カツ代伝』

私が死んでもレシピは残る 小林カツ代伝作者: 中原一歩出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2017/01/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 具材がはみ出しているサンドイッチが好きだ。盛りだくさんで得した気分になれる。見ただけで目と心の…

「よいしょ」不足な場合に効くかも〜usao漫画

usao漫画作者: usao出版社/メーカー: 扶桑社発売日: 2016/12/22メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る 「よいしょ」 電車の座席や公園のベンチから、そう口にして立ち上がるお年寄りをときどき見かける。気がついたら、部屋の…

俳句の向こう側へ 〜最果タヒ『夜空はいつでも最高密度の青色だ』(リトルモア刊)

夜空はいつでも最高密度の青色だ作者: 最果タヒ出版社/メーカー: リトル・モア発売日: 2016/04/22メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (8件) を見る わりと引きは強いほうだ、と思う。面白い本やCD、気になる取材候補先とか。ひさしぶりに…

イチゴと農薬と有機肥料のゾッとする関係

希望のイチゴ作者: 田中裕司出版社/メーカー: 扶桑社発売日: 2016/02/06メディア: 単行本この商品を含むブログを見る この本を読めば、つやつやした濃赤色の果物の見え方がガラッと変わる。鮮やかな色や立派な形の割に、美味しいと思えるものが少ない理由も…

サルサソースと暇と退屈と胸さわぎ〜國分功一郎『暇と退屈の倫理学』

暇と退屈の倫理学 増補新版 (homo Viator)作者: 國分功一郎出版社/メーカー: 太田出版発売日: 2015/03/07メディア: 単行本この商品を含むブログ (44件) を見る うんざりする猛暑を束の間忘れさせてくれるのが、メキシコ製のサルサソース。とろけるチーズを載…

ブーメランのように 〜堀川恵子『教誨師』(講談社)

木内三郎が処刑されたのは、それから暫くしてからだ。 ひらがなとカタカナをすっかりマスターし、漢字を幾つか覚え始めた頃だった。最後の瞬間まで大きな体をブルブル震わせて、両目なみなみと涙を溜めていた。 すべてが終わり、冷たい地下室に下りると、す…

ちっぽけな祝祭〜近藤篤 写文集『ボールピープル』

ボールピープル作者: 近藤篤出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2013/05/29メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る バカみたいにだらだらと走った翌日。五月晴れのうららかな窓外の光景を尻目に、日がなコツコツとキーボードを叩きつづける。こん…

葛藤という花〜マキノノゾミ著『東京原子核クラブ』(ハヤカワ文庫)

今、世間で何かと話題の理化学研究所モノ。例の話とは一見何の関係もないようでいて、じつはちょっぴりあるような演劇脚本を08年に文庫本化したもの。ノーベル物理学賞を受賞した朝永振一郎の青春時代を舞台に、原爆製造をめぐる科学者たちの情熱と狂気を描…

誰にも奪われない力〜河原理子著『フランクル「夜と霧」への旅』

毎朝起きると洗顔、つづいて布団のうえでストレッチをしてから、ベランダに出る。座禅を組み丹田で深く呼吸しながら、まず母の顔を思い浮かべる。お湯を沸かしお茶を入れて小鉢に分け、お茶好きだった母の写真の前において、おはようと声をかける。 あるいは…

はだかの若大将〜『粉飾の「ヒーロー」堀江貴文 彼がいまだにわかっていないこと』ライブドア株主被害弁護団著(インシデンツ)

日本人は”ヒーロー”好きだなぁと、出所後のホリエモンをめぐる報道などを尻目に思っていた。出所後の彼の著書で、なぜかヒット中の『ゼロ』をアマゾンで検索すると、読者レヴューには、ざっと見た限りでは、「粉飾決算」の文字がなかなか見つからない。もし…

マラソンの要素を4分割する〜岩本能史著『違う自分になれ!ウルトラマラソンの方程式』(講談社)

朝から降り続く雪を時折見ながら、今日は原稿をちんたらちんたら終日書いていた。その休憩時間に残りを読み切ったのがこの本。 米国カリフォルニア州を舞台にした全長217kmを60時間以内(2010年当時)で走るウルトラマラソン「バッドウォーター」に合計…

フォロワーの国 〜〜 吉見直人著『終戦史 なぜ決断できなかったのか』(NHK出版)

1945年6月、つまり原爆投下を招く前の時点で、連合国側に対して日本の降伏はありえた。だが結果から見れば、それは8月の2度の原爆投下後にまで先送りされてしまった。英国国立公文書館に保管された、膨大な機密文書の分析作業、関係者の戦後証言やイン…

身を粉にして書くこと ~ キャロル・スクレナカ著(星野真理訳)『レイモンド・カーヴァー 作家としての人生』

2冊同時に読み始めて、途中からカーヴァーの評伝しか読めなくなった。もう一冊は、作家の大崎善生さんが書いた、故・SM作家団鬼六の物語『赦す人』(新潮社)。前者のほうが、その筆致が淡々としながら、質量ともにとてもグラマラスで、筆者がいたずらに本…

飛べない自由〜中村文則『掏摸(すり)』(河出文庫)

米国のクライムノベルかと見まがうような硬質な文体。短く句読点を入れてテンポを高め、読者をぐいぐいと引っぱりこんでしまう腕力に圧倒される。文章に心地よく引きずり回される、マゾヒスティックな感覚をひさしぶりに堪能する。 反社会的な存在である掏摸…

幼形成熟 〜井口時男『少年殺人者考』(講談社)

永山則夫や李鎮宇から、宮崎勤や神戸連続児童殺人事件の少年A、最近では秋葉原無差別殺傷事件の加藤智大。本やメディアに露出した彼らの言葉や生い立ちを、文芸評論としてまとめる。その理由を、本書のあとがきで、井口氏はこう書いている。 彼らは、身をも…

ケータイ&PC禁止〜山田昭男本をダ・ヴィンチ電子ナビが紹介

8月15日発売の山田昭男さんの著書が、ダ・ヴィンチ電子ナビに「ケータイ&PC禁止」という表題で紹介されました。それがさらにyahoo!ニュースなどにも転載されて、アマゾンでいきなり100番台に急上昇!アマゾンのランキングに限ってみれば、日経新聞の広…

新刊本のお知らせ〜山田昭男著『毎日4時45分に帰る人がやっている つまらない「常識」59の捨て方』

創業以来49年間、売上目標を立てたことがない。 この本のプロローグはそこから始まります。前例踏襲、横並び、あるいは<報告・連絡・相談>による管理主義といった日本企業の「常識」にことごとく逆行する一方、年功序列で終身雇用制度は守ることで、その…

うつろうことば〜辺見庸著『青い花』

昔、九段会館で辺見さんの講演を聴いたことがある。そのとき青空の下で桜の蕾(つぼみ)を何枚かデジカメで撮った記憶もある。たしかバッハの無伴奏チェロの演奏者との共演だった。 低音が響く、あの少ししゃがれた声と、淡々とした語り口。その言葉は、ひと…

心の磨き方〜川田修著『僕は明日もお客さまに会いに行く。』(ダイヤモンド社)

2泊の大阪出張中、ホテルを出る前に、部屋のハンドタオルで洗面台周りをきれいに掃除した。外資系生命会社勤務の川田修さんから、以前贈っていただいた『仕事は99%気配り』(朝日新聞出版)の中でもっとも印象的だった彼の習慣の、猿真似だ。 川田さんは…

わらえて、いたくて、せつない狂気〜中島美代子著『らも 中島らもとの三十五年』(集英社)

「劣等感と崇拝がそうであるように、優越感と軽蔑も愛の重要な隠し味なのだ」 この本の前に読んだ本の一節。そして上記の『らも』は、まさにその一文をリエゾンするかのような夫婦の軌跡が綴られていた。まるでシンクロニシティのような流れに気味が悪くなる…

切っ先の鈍い光〜藤山直樹『落語の国の精神分析』(みすず書房刊)

落語と精神分析って? そう思う人たちは、たとえば「粗忽(そこつ)長屋」をテーマとした章で、こんな文章に向き合うとき、たとえば心臓の裏側らへんに、なんとも嫌な汗をかくはずだ。粗忽とは、おっちょこちょいのこと。 粗忽な人を見るときのひとびとの視…

至福の目ん玉〜藤山直樹著『落語の国の精神分析』(みすず書房)

ふと目に留まる、気になって手に取る、読み始めると一気に引き込まれてしまうその瞬間にこそ、本読みのたまらない歓びがある。在米中国人小説家、イー・ユンリー以来のそんな一冊。少し長いが、同書の「立川談志という水仙」の一節を引用する。 『高座に上が…

決めつけること 暴くこと〜入江杏著『悲しみを生きる力に』(岩波ジュニア新書)

当事者でないと見えないものがたくさんある。そして当事者ではないから、無意識に、他人を傷つけてしまうこともある。 2000年に起きた世田谷一家殺人事件。二世帯住居で、妹一家を唐突に奪い取られた著者が、失望や自責の念、周囲の偏見などから生きる意…

「当たり前体操」が踊りたい〜内田樹著『日本辺境論』

かつては中国、現在ならアメリカという「上位者」に対する、「辺境人」として日本人を位置づけるテーマ設定の下、日本人の歴史的な行動形式や勤勉さ、さらには日本語の在り方にまで及んで、その一環した「辺境人」ぶりにスポットライトを当てている。2009年…

つながる

友人から真砂秀朗さんの『畦道じかん』(テン・ブックス)という本をいただいた。アーティスト兼ミュージシャンで、なおかつ冬期湛水不耕起田んぼでの、お米作りを十数年つづけている方。畦道(あぜみち)という視点から自然と人の、経済といのちの関係を詩…

最高に面白い本大賞ビジネス書部門第9位〜全国のカリスマ書店員180人からの評価に感謝!

月刊誌『一個人』2013年1月増刊号が「2012年度最高に面白い本大賞」という企画を掲載している。副題は、「全国のカリスマ書店員180人が本気で選んだ15部門150冊」。そのビジネス部門第9位で、山田昭男著「ホウレンソウ禁止で1日7時間15分しか働かないから…

海の底の龍宮

海の底の景色も陸(おか)の上とおんなじに、春も秋も夏も冬もあっとばい。うちや、きっと海の底には龍宮のあるとおもうとる。夢んごてうつくしかもね。海に飽くちゅうこた、決してなかりよったー。 石牟礼道子著『苦界浄土』第三章、「ゆき女きき書き」のこ…