「よいしょ」不足な場合に効くかも〜usao漫画

usao漫画作者: usao出版社/メーカー: 扶桑社発売日: 2016/12/22メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る 「よいしょ」 電車の座席や公園のベンチから、そう口にして立ち上がるお年寄りをときどき見かける。気がついたら、部屋の…

言葉が歌に届かない〜Bon Iver『For Emma Forever Ago』

俳句の向こう側へ 〜最果タヒ『夜空はいつでも最高密度の青色だ』(リトルモア刊)

夜空はいつでも最高密度の青色だ作者: 最果タヒ出版社/メーカー: リトル・モア発売日: 2016/04/22メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (8件) を見る わりと引きは強いほうだ、と思う。面白い本やCD、気になる取材候補先とか。ひさしぶりに…

シャンパンタイム〜矢野顕子&YUKI(zeep divercity tokyo)

「林檎っこの気持ちは よ〜ぐ わ〜がる 林檎っこ めんごぃや めんごぃや 林檎っこ~♪」 YUKIが舞台に登場して、矢野さんの伴奏でいきなりこの曲を歌い始めたときは、青森育ちの矢野さんへの少しヒネッたオマージュかと思ったが、ちがった。YUKIは函館育ちで、…

「ただの大人」へ崖っぷち〜竹原ピストルが聴きたい

遅い食後につけたテレビにピンときた。竹原のドキュメンタリーだった。 「取り返しのつかないところまで 突っ走って 突っ走り方を取り返すのさ 初めから扉なんてないのに 鍵を探し回って それじゃ ただの大人だろ」 ジャガイモみたいな髭面にしゃがれた声、…

車窓の天の河「ねえ、あんた、私をいい女だって言ったわね。行っちゃう人が、なぜそんなこと言って、教えとくの?」 駒子が簪(かんざし)をぷすりぷすり畳に突き刺していたのを、島村は思い出した。 「泣いたわ。うちへ帰ってからも泣いたわ。あんたと離れる…

手紙のように話す人 終始伏し目がちに、集まった50人ほどの聴衆とは目を合わさずに穏やかな声で淡々と話す。自ら、本業は薬草屋と話す若松英輔氏を見ながら、ふと勝手に合点した。 この人は1人の読者を念頭に原稿を書くように今話をしているにちがいない、…

イチゴと農薬と有機肥料のゾッとする関係

希望のイチゴ作者: 田中裕司出版社/メーカー: 扶桑社発売日: 2016/02/06メディア: 単行本この商品を含むブログを見る この本を読めば、つやつやした濃赤色の果物の見え方がガラッと変わる。鮮やかな色や立派な形の割に、美味しいと思えるものが少ない理由も…

ビートたけしのTVタックル

TV

9月8日の拙ブログ「Yahoo!台風」で、東洋経済オンラインで書いた拙記事が、Yahoo!ニュースで紹介されたことに触れました。その記事のキーワード「楽園企業」が、テレビ朝日の「ビートたけしのTVタックル」で今夜紹介されます。チョロっとのオンエアかもし…

ちっぽけなこと

Run

両足の親指と人指し指に、重心がしっかりと乗っている。 走り出して15分ぐらい過ぎて、いつもの川沿いのコースに出てから、そのことに気づいた。先の水曜日のこと。もう7年近く走ってきたが、この感覚は初めてで素直にうれしかった。 6月に100キロを…

 Yahoo!ニュース台風

Yahoo!ニュースの威力をまざまざと見せつけられた。今朝6時すぎに東洋経済オンラインにアップされた私の記事が、同10時半にはYahoo!ニュースの経済欄のトップ10にランキングされたと、編集者から電話が入った。 その編集者も初めての体験らしく、少し興奮…

男前サックス〜BLACK WAX (渋谷「WWW」)

ここで昔、映画『バグダッドカフェ』を観たなぁ。あれ、誰と来たっけ? BLACK WAXの演奏に身体を揺らしながら、一瞬そんな感傷にとらわれて、渋谷シネマライズ地下の天井をぼんやりと見上げた。そこが今や「WWW」というライブハウスになっていたことも、初め…

ウメジャンの教え

キムジャンという韓国語がある。晩秋の韓国の家々で、大量の白菜を買い込んでキムチを漬ける作業のこと。姑とお嫁さんとか、ご近所と合同でとか、けっこう大々的に行われる。冬の到来を知らせる風物詩だ。今はどうか知らない。僕が約1年間ソウル市で下宿暮…

サルサソースと暇と退屈と胸さわぎ〜國分功一郎『暇と退屈の倫理学』

暇と退屈の倫理学 増補新版 (homo Viator)作者: 國分功一郎出版社/メーカー: 太田出版発売日: 2015/03/07メディア: 単行本この商品を含むブログ (44件) を見る うんざりする猛暑を束の間忘れさせてくれるのが、メキシコ製のサルサソース。とろけるチーズを載…

休憩のテラス〜「画家の素顔」展・石橋美術館(7月5日まで・福岡県久留米市)

art

右斜め上から雨が降り続いているが、音はしない。目の前で葉をゆらす7月4日の枝垂れ桜や、弧状に覗く池の白蓮、その周囲をゆっくりと歩き回る真鴨、そして何より朝からつづく雨のせいでいっそう艶やかな緑葉の林に、ただただ溜息がもれる。 縦3m横6mほど…

昔の大嫌い〜ゆで塩豚と茗荷とキュウリの和え物

にがっ! こんなマズいもんを、味噌汁に入れるなんて信じられへんわ・・・・・。小学校6年生の夏休み、人生初の一人旅は京都府綾部市にある母方の実家。最初の夜に出されたのが、茗荷(みょうが)と揚げの味噌汁だった。 川での水遊びとカブト虫捕り、そし…

世の中に知らしめる力

ドリアン助川さんがね、「カンヌに一緒に行きましょう」といわれたので、タキシードまで作って夫婦で出かけたわけです。パリのほうかと思ったら、カンヌって南フランスでね、イタリアも近いっていうから、せっかくだからって、スパゲッティ食べにイタリアに…

アホウドリがとんだ〜阿奈井文彦さん追悼会

敬愛する先達、ルポライターの阿奈井文彦さんの『サランへ 夏の光よ』(文芸春秋)は、阿奈井さんが幼少の頃に他界されたお母さんの棺の、じつに精緻な場面描写から始まる。それはゆっくりと舐めるように撮影された、映画の長回しシーンのような書きっぷりで…

それぞれの矜持〜柴又100KM(2) 50kmすぎに感じた胃の痛みも、しばらく歩いていると落ち着いた。恐る恐る走り出すと、脚はまるで問題ない。ちょうど強い日差しが雲でさえぎられ、風が少し出てきた。思わず両手をひろげてその風を浴びながら前進する。…

2年越しの夢〜柴又100km(1)

RUN

先週土曜日の午後8時すぎ。河川敷の舗装道路を揺れながら照らす自分のヘッドライトの視界に、「99km」の表示が見えた瞬間、緊張がふいにゆるんで涙腺が熱くなった。 レースの制限時間は14時間で、午前7時15分にスタートしていたから、まだ1時間以上あっ…

「弱さ」という灯明(作家・高橋源一郎氏 毎日新聞インタビュー記事)

最近、ネットで読んだ中では、この高橋さんの記事が秀逸。世の中の有様をきれいに照らし出してくれている。

決然たる文字 〜「須賀敦子の世界展」(神奈川県立近代文学館今月24日まで)

art

須賀さんには晴れよりも、曇天のほうがしっくりとくる。折りたたみ傘をデイバックに忍ばせ、山下公園から港の見える丘公園への坂道をゆっくりと上りながら、そんなことを思った。 須賀さんの描く実在の人物たちの多くが、思うに任せない現実を、意志を曲げず…

「『黄昏のビギン』の物語」〜日常が微熱をおびるとき

「黄昏のビギン」の物語: 奇跡のジャパニーズ・スタンダードはいかにして生まれたか (小学館新書)作者: 佐藤剛出版社/メーカー: 小学館発売日: 2014/06/02メディア: 新書この商品を含むブログ (2件) を見る 2時間走の疲れをとろうと風呂をわかす。ネットラ…

実りの食卓〜最後の新米

モチモチしてて、普段食べてる玄米より、やっぱりおいしいね。いつも田んぼ帰りの作業着に「臭い臭い」を連発して顔をしかめていた彼女が、めずらしくホメてくれる。もちろん、悪い気はしない。たしかに心地よい歯ごたえと、胚芽のツブツブ感のアクセントが…

場外ホームラン〜今日マチ子・藤田貴大・いとうせいこうトークショー(表参道・ABC本店)

COCOON作者: 今日マチ子出版社/メーカー: 秋田書店発売日: 2010/08/05メディア: コミック購入: 6人 クリック: 141回この商品を含むブログ (44件) を見る 「わたしは、たぶん戦争になったら、簡単に世の中の流れに引っ張られていっちゃう情けないヤツだという…

自縄自縛のくせ〜東京新聞💘8月15日朝刊8・9面「いとうせいこう・金子兜太対談」

さいたま市の公民館が憲法九条を詠んだ市民の句「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」を掲載拒否したことから、対談が始まる。 いとうがまず指摘する。「こういう自粛という形で、権力が上から高圧的にではなく、役人が下から自分たちで監視社会みたいにして、…

ブーメランのように 〜堀川恵子『教誨師』(講談社)

木内三郎が処刑されたのは、それから暫くしてからだ。 ひらがなとカタカナをすっかりマスターし、漢字を幾つか覚え始めた頃だった。最後の瞬間まで大きな体をブルブル震わせて、両目なみなみと涙を溜めていた。 すべてが終わり、冷たい地下室に下りると、す…

バースデイケーキ

義父の誕生日に太平洋をこえてSkypeでお祝いを伝える。ウチの奥さんも帰国中なので、日本から祝意をつたえるためにこの被り物を選んだ。笑ってもらえてよかった。親戚の皆さんもニヤニヤ。

柔らかな膝

Run

「以前と違って膝の使い方がとても柔らかくなって、上体の力をうまく逃がしている」 ネットを見ていたら、マリナーズの岩隈投手のコメントに目が留った。元同僚でヤンキースの田中投手の投球フォームの変化について彼が語ったもの。以前はもっと勢いよく左足…

心が折れる音 〜 オランダ対スペイン5:1

スペインの守護神カシージャスは、きっとあの場所から、世界中の人々の視線から走って逃げ出したかったにちがいない。前回W杯王者の初戦で、守備陣からのバックパスをトラップミスしたところをファンペルシーに狙われ、慌ててボールを追いかけたところで濡れ…