篠原欣子さんのかわいさと強さ

rosa412004-04-07

 以前、お伝えした人材派遣大手テンプスタッフの篠原欣子社長(69歳)の記事掲載の「女性自身」が、昨日発売された。
 そこで楽屋裏話を少々。最初にお会いしたときから、ぼくはすっかり篠原ファンになっていた。取材者としては良くないんだけどねぇ。でも好きなものは仕方ないやん!
 従業員約1500人、年商約1500億円企業の創業社長は、まずとても愛らしい。ざっくばらんで、少しも飾らない。当然、みじんも偉ぶらない。ぼくが今まで会った政治家や経営者たちは、ないものをさもあるかのように振舞う人もけっこう多かった。篠原さんはまるでそれがない。
 話し方も近所のおしゃべり好きなオバサンみたいで、おまけに少々おっちょこちょい。ぼくから見たら、色でいえばピンク、花でいえばスイートピーという感じの女性だった。
 演技臭さがみじんもない、あのかわいさとは何か?今回の取材中、ぼくはずっとその答えを探していたような気がする。
 以前の日誌で、長島茂雄さんの入院報道についてふれたとき、辰巳渚さんの「無私の人」という言葉を紹介した。篠原さんも、ある意味「無私の人」だ。宝石や洋服には興味ないし、イヤリングも「偽物よ」と誰も聞いてもないのに、自分から告白してくれる。そしてニコニコと微笑んでいる。
 でも、それだけじゃ企業経営はできない。こんなエピソードがある。創業当初の資金繰りが厳しい時期、一方で実母に保証人になってほしいと泣いて懇願しながら、一方では社員が英文タイプで外資系企業の宛先を打ち間違えて、請求書入りの郵便物が何度も戻ってくるのを見てみぬふりして通した。
 その理由をぼくがたずねると、自分自身が母親に怒られたことがないことを第一の理由としてあげて、彼女はこう続けた。
「私をふくめて人は誰でも失敗する。悪意がある失敗なら正さなきゃいけないけれど、そうでなければ、いちいち怒っても仕方ない。それに上司から怒られて向上する部分もあるでしょうけど、それを繰り返していると、怒られない術はよく覚えても、自発的に物事を考えない人になってしまう。それなら自分なりに失敗を重ねながらも、自発的に考えようとする人の方が絶対伸びるから」
 これは理屈としてはわかりやすいが、実際にはかなり難易度が高い。ぼくもふくめて、耳が痛いという人多いでしょう?もちろん、職場にかぎらず、恋人でも夫婦でも同じだと思う。
 耳が痛い話をもうひとつ。98年に9万人分の派遣スタッフ名簿が流出して、大々的に報道されたとき、篠原さんは必要経費を除いた内部留保金で、退職金がわりに社員全員に一年間分の給料を支払えるかどうかの一点を確認できた時点で、開き直った。なるようになるわと。
 自分はゼロから始めたから、またゼロに戻っても怖くないの、彼女はそう話し出した。
「掃除のオバサンでもなんでも、私やっていける自信があるから。でも男の人はダメよね。社長までやった自分がなんでって、体裁を気にするからできないわよね。死ぬ気になればなんとでもなるのに・・・。だから男ってもろいのよ」
 彼女がそういい終わるや否や、ぼくは「グサッ」と自分でいいながら、胸にナイフを刺す仕草をしてみせたら、彼女はまたホホホホッと愛らしく笑ってくれた。
 スイートピーは簡単に手折れるけれど、こういう女性はけっして折れない。こんな強さとたくましさに裏打ちされた彼女の愛らしさに、ぼくはやられたんだと納得した。

(写真中央の白いスーツが篠原さん。彼女に興味がある方は、芦崎治著『逃げない人は、人を助ける』(中経出版 ASIN:4806119431)をどうぞ。逃げない人を、人は助ける large