後藤繁雄トークショー〜骨の髄まで編集者

rosa412004-05-07

 自らがいかに旨いもの好きかをひとしきり話した後に、彼はこう言った。
「たとえば、京料理を美味しいという一派と、不味いという一派があるんですね。だから、今度、京都に行く機会があったら、それぞれの視点から京料理を食べてみるのも面白いですよ」
 その話を聞いたとき、この人は骨の髄まで編集者なんだなぁと思った。ぼくはそんなこと考えたこともない。ちょっと練習してもいいかも。 
 編集者兼作家でもある後藤繁雄さんの新刊『僕たちは編集しながら生きている』(マーブルトロン発行 ASIN:4123900631)出版記念トークショーでの彼の言葉だ。表参道の交差点近くにある、青山ブックセンター本店隣で、さきほど19時から21時まで行われていた。
 ゲストはweb magazine「REALTOKYO」と、季刊雑誌「ART IT」発行人・小崎哲哉さん。(このwebは左のアンテナにあります。コラムがかなり充実。また後藤さんのwebも同アンテナgotonewdirectionへ)
 実は18時半開演だと思い込んでいったので、たどり着いたら会場はガラガラ。こういうときに本屋が隣というのは、大変ありがたい。白洲正子著「いまなぜ青山二郎なのか」(新潮文庫400円 ASIN:410137905X)を買う。
 ぱらぱらと文庫本をめくりながら、開演を待とうとしたら、冒頭からいきなり文章が濃厚。まるで剣豪みたいな洞察力の白洲節爆発で、若き日の彼女をたしなめる青山二郎がさらに輪をかけて凄まじい。思わず読みながら背筋を正してしまった(^@^)。
 だが、ぽっかり空いた時間を埋めるときに衝動買いする本は、当たりが多いことを再確認する。
 トークショー終了後、表参道交差点近くの「大坊珈琲店」へ。ちょうど空いていて、カウンターに座ると、白髪まじりの寡黙なマスターが珈琲をいれてくれた。
 熱湯を太さ5mm前後に保ちながら、ゆっくりまんべんなく注ぎつつ、お湯を注ぐポットと豆濾(こ)しを交互に上げ下げしながら、丹念にむらしていく。その一連の手際を見てるだけで、僕はけっこう満腹になる。贅沢な650円の幸せ。
 後から来た中年男二人組が、ストレートのモカ(800円)を注文すると、お猪口大の容器に(たぶん50cc)いれていた。今度行ったら、ぼくもあれ頼もっと。