山下洋輔×菊池成孔「2014年のソリチュード(孤独)」(東大駒場小空間)〜JAZZの懐深さ

rosa412004-05-10

 10m先で山下洋輔がピアノと格闘していた。時にソフトな指使いで、時に左肘をエルボーバット気味に鍵盤に叩きつけ、時にピアノと性交するかのように上体をうねらせながら。約300人ほどの濃密な空間で、JAZZを堪能した。これで3000円ならゴージャスすぎる。
 最初は少し硬さが見えた菊池も、3曲目後のMCをへて、だいぶリラックスして、伸びのある、空間を陵辱するかのようなサクソフォンを響かせる。しかし先行する菊池の音を受けつつ、いつの間にか、夥しい音でそれを包囲してしまう山下。そんな攻防がスリリングだ。
約20年前、山下との初対面で、菊池がスタジオに行くと、山下が先着していたときの話も笑えた。現在、東大教養学部で講師を務める菊池はこう言った。
「山下さんが身体から湯気を立てながらピアノの試し弾きをしていて、その鬼気迫る光景に、俺、思わず帰りかけましたから。なんか取って食われそうな気がマジでしました」
 うーん、その光景が浮かんできそうだ。
 この夜、JAZZの懐深さをこの日の聴衆に痛感させたのは、フィナーレの、平井堅が歌ってヒットした「古時計」だったと思う。
 主旋律を逸脱してアドリブに走りつつ、再びブーメランのように戻ってくる。行きつ戻りつしつつ、サックスとピアノの音が絡まり合いながら、ともに高まっていく。それはメロディの破壊と再生を目の当たりにするような幻想的光景だった。
山下洋輔http://www.jamrice.co.jp/
菊地成孔http://park10.wakwak.com/~kikuchic/
追記1)
ちなみにこのライブ情報を知ったのは、左のアンテナのweb「REAL TOKYO」。けっこうレアな情報が発見できます。
追記2)
山下さんといえば、綾戸智絵さんとのライブがDVDで発売中。これはJAZZ好きでなくても、じゅうぶんに音楽の楽しさを満喫できると思います。綾戸さんのwebより以下引用。
http://www.ayado-club.com/shop/index.php3