引きこもりシンポジウム(千葉市民会館) 

rosa412004-06-19

 今週火曜日の日誌で書いた、拙著関連のシンポジウムが行われた。各新聞社の千葉版で告知してもらったせいで、定員の100人を大幅にこえる参加希望の電話があり、急きょ、当日は2回開催となった。若干のキャンセルはあったようだが、2回ともほぼ満席状態だった。
 参加者の大半は50、60歳代の夫婦、中高年の女性で、その多くは引きこもりの子供をかかえている人たちだ。中には、引きこもっている子供をつれた夫婦や、陰鬱な表情の若者だけの参加者もいる。それだけの数の当事者と向き合うのは、3月に東京・日本青年館でやったシンポジウム以来だ。
 一見、大人しく生真面目そうな、普通の夫婦や母親が多い。引きこもる若者たちも、どちらかといえば、対人関係や自分に対して生真面目すぎたり、ナイーブすぎたりする傾向があるというから、引きこもり問題の根深さを思わずにはいられない。
 シンポジウムでは、拙著に登場した8人中7人がパネラーとして並び、司会役のぼくが、彼らが引きこもった理由や、家を出ようと思った経緯、ニュースタート事務局で共同生活をしたり、仕事体験をする中での変化を語ってもらう形で進行した。二日前の日誌で書いたK君は、うちの奥さんがプレゼントした青い半袖シャツをさっそく着て、パネラー席に座っていた。
 親側が聞きたいポイント、たとえば引きこもった子供から親はどう見えているのかとか、親にできることの有無などを、丁寧に彼らに語ってもらいながら、割とテンポよく、多少笑いもありつつ、2回とも進行した。
 最後にぼくが少し話した。拙著の取材中に、まだニュースタートにいたK君がプログラマーに興味をもっていたから、あるベンチャー企業の社長に面接をしてもらったこと。すると無給で半年間修行してみるかと誘われて、幸運にもその会社で働きだせたこと。無事その半年がすぎてアルバイトに昇格したこと。今月上旬に初めてアルバイト料が出て、つい二日前にそのバイト料で、うちの夫婦や社長らがK君から、インドカレー屋でご馳走になったこと。今日、K君が着ているのは、そのお返しにうちの奥さんがプレゼントしたものであること。中学三年生から6年超も引きこもっていた彼でも、キッカケさえあれば、そんなふうにどんどん変化していけたことを伝えた。すると大きな拍手が会場から起こった。予想以上の盛り上がりに、ぼくも正直驚いた。
 拍手した人たちは、好きな仕事を見つけて歩きだしたK君に、自分たちの子供の未来をだぶらせたり、行き詰まる自分たちの日常にふいに開いた、小さな窓を見つけたのだろう。そう考えると、その微熱をおびた空気はとても哀切なものでもあった。
 子供が引きこもることで、知人に知られないうちに親の責任でなんとかしなければと思い、結果的に家族全部が社会から引きこもってしまうケースも多いという。うまくニュースタートみたいな第三者の手を借りて、現状を打開していってもらいたいと改めて思う。
NPO法人ニュースタート事務局」http://www.new-start-jp.org/