メディア・リテラシーはかなり難しい

rosa412004-06-22

 今朝、NHK-BSで、今回のイラク戦争を、米国政府あるいは米国軍と中東のテレビ局アルジャジーラの情報戦争という観点から取材した、ドキュメンタリー番組を放送していた。アメリカ・エジプト製作とクレジットされていた番組だ。
 もっとも印象的だったのは、米軍がバグダッド市内に侵攻して、フセイン銅像が倒されたときのことだ。銅像が倒される前に、まず米軍兵士が星条旗をその銅像に巻きつけてから下ろし、その後でイラク市民がイラクの国旗を、フセインの顔に巻きつけようとした映像を見て、アルジャジーライラク人女性スタッフはこう言った。
「あれは1991年以前に用いられていた昔の国旗です。あんな国旗を今も持っているイラク市民はいません」
 あるいはフセイン政権崩壊後、一般の商店やら行政機関などから、市民が物を略奪する映像を見ながら、アルジャジーラの男性スタッフはこう断定した。
「あれはバグダッド市民ではなく、クルド人です。欧米諸国の人が見ても区別はつかないかもしれませんが、イラク人が見れば一目瞭然です。クルド人自治区にいるはずの彼らは誰かの手によって、急きょバグダッドまで連れてこられて、フセインの圧政がなくなり、暴徒化するバグダッド市民を演じさせられているのです」
 もちろん、アルジャジーラの人たちの証言を検証する術は、極東の国に暮らすぼくにはない。しかし、そういう視点で同じ映像を反すうすると、その映像はまるで違った意味をもってくる。
 仮に米国政府、そして米軍の戦争演出がそこまでショーアップされているとすれば、ただ映像だけを見せられて、その是非を論じるメディア・リテラシーは一般視聴者にはかなり難しい。そこまで演出する術のないアルジャジーラは、米軍の爆撃で命を落としたイラク人をひたすら撮影し報道することで対抗した。いや、それ以外になかった。
 しかし、よく考えてみれば、白人女性兵士の奪還物語を自作自演して、後で本人から”やらせ報道”を暴露された米軍であり、米国政府だから、それぐらい朝飯前だとも考えられる。
 すると、ブッシュの子分の総理大臣の世論誘導術も気になる。地村さんや蓮池さんの子供たちとともに、首相が日本に舞い戻った日、拉致被害者が御礼をのべる場面を放送させず、彼らが激昂し、首相なじる場面ばかりを放映させ、自らは黙って聞き入る耐える首相を演出して、世論の反感を被害者家族へ向けさせたのもブッシュ仕込みか。日本の世論誘導報道さえ、かなり高度なレベルになっていて、ぼくらのメディア・リテラシーはかなり無力化している。そんな視点が、ぼくやあなたにも、そろそろ必要なのかもしれない。