『コートドール』(港区三田)マンゴーのババロア三変化

調理場という戦場 ほぼ日ブックス
 29日(木)に、三田の仏料理店『コートドール』でランチ。3日遅れの、ぼくの誕生日記念ということで出かけた。約2年ぶりか。あんまり仏料理って顔でもないんだけどね(^^;)。まっ、誕生日という”ハレの日”なんで許して。
 この日のランチメニューは、フランスパンに小エビのチーズ添えをのせたオーブン焼き。この店の定番である赤ピーマンのムース、子羊のグリル、アニス(整腸作用のあるハーブ)の汁にリキュールをまぜたシャーベット、マンゴーのババロア。それに友人から勧められていた青ジソと梅の冷製スープを別途注文した。
 冷製スープってニンジンとかカボチャとかが多いから、仏料理愛好家は、青ジソと梅という和風メニューに斬新さをおぼえるんだろうなぁ。夏の疲れを青ジソと梅の酸味で補うという、薬膳っぽい料理人の発想もわかる。でも量が多いので、仏料理愛好家ではないオッサンには、だんだん味がくどくなってしまう。そこでパンにつけたりして、自分でアクセントを作りながら、なんとか食べきった。そんな感想だ。スープに添えられていたカブのジュリエンヌもかなり酸味がしみていたから、スープとともに厨房にストックされているんだろう。
 一番「うまい」と思ったのは、子羊の肉。まず焼き加減が絶妙で、ナイフを入れると、肉の断面がポーッと頬をそめたみたいに、レアな感じを残しつつ、きちんと火が通してある。噛むたびに口の中で、肉のジューシーなうまみがひろがる。この店には4、5回行っているけど、今まで食べたメインの中では、一番インパクトが強かった。しかも赤ワインベースのソースが、唸りそうになるほどうまい。
 でもね、味の作り方として、もっとも印象深かったのはマンゴーのババロア。黄色いスープにババロアがうかんでいて、それをすくって口に入れると、3つの味が交互に口の中に広がった。まずはスープの青臭い酸味、次に生クリームのまったり感、最後にマンゴーの味が舌に沈着するという流れ。マンゴーの味を求める舌を、まず不協和音みたいな青臭い酸味で裏切り、さらには生クリーム味でじらし、最後にマンゴーの味を舌に残す。そういう味のプレゼン方法に、斉須政雄さんという料理人の腕と矜持を満喫した。
 後で聞くと、マンゴージュースをレモン果汁と水でといたものが黄色いスープの正体で、ババロアには生クリーム以外に、ココナッツミルクも混ぜてあるという。
 文章の教材は、きちんと目をこらしていれば、こんなデザートの一皿の中にも転がっている。
●コートドール
http://gourmet.yahoo.co.jp/gourmet/restaurant/Kanto/Tokyo/guide/0201/M0013001985.html
●斉須政雄著作リスト
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/search-handle-form/249-9672024-6231534