むつ小川原ウィンドファーム〜設備利用率20%の意味

rosa412004-08-03

 灯台下暗しとはこのことだ。えっ、何がって?風力発電と、自分の生活態度のつながりってこと。
 先週行って来た青森県のむつ小川原ウィンドファームは、八戸から在来線特急でさらに30分、さらにタクシーで30分という場所にあった。東京・八戸間が新幹線で約3時間だから、合計約4時間か。写真のごとく22基の風力発電で、年間5300万kwhの発電量を目安に、昨年から稼動している。この発電量を金額に換算すると、この周辺の1億5000世帯分の電気量で、約5億3000万円相当だ。
 だが担当者の話を聞いて、ぼくも初めて知ったのだけれど、ここにかぎらず、風力発電は平均20%の設備利用率しかないという。設備稼働率って、この風車22基が風速15m前後で24時間フル稼働した場合のことで、それは年間365日の20%だから約72日間という計算になる。ただ、むつの場合、平均風速は6m。風速3mで回転し始め、発電できるのは5m前後からだから、だいたいは6m前後で半年間たらたら回っている計算らしい。
「しかも自然相手ですから、風の状況はけっして安定していません。去年から今年初めにかけては日本海側から強い風が吹いて喜んでいたんですが、この夏は吹くべき太平洋側からの風がぜんぜんダメなんです。夏風が吹かないと、稲作農家は喜ぶんですけど、私らは泣いてますよ」
 ウィンドファームの担当者はそうこぼしていた。だから見学者の中で「原発をやめて、全部、風力発電に切り替えたらいいのに」なんて人がいると、風力発電がいかにメインの発電になれないのかを逐一説明するらしい。発電量がまさにその日の風まかせで、不安定すぎるために電力の安定した供給がのぞめない。原子力、火力、水力、それらを補なう風力発電という位置づけでしかありえない。
 ただ、他の発電方法にくらべて、二酸化炭素の排出量が極端に少ないから、国内電力会社に義務的に買い取らせているのが現状。風力発電は1kwhあたり9円。だが、そのうち3円は実際に電気として使えるが、残り6円は環境付加価値で、実態のないものらしい。つまり、石油に頼らない発電量を増やさなければいけないという大前提の下、実態のないものを、電力会社に買い取ってもらっているわけだ。
 だから一方的に原発や、電力会社を悪者視しているだけでは何も変わらない。なぜなら原発を生み出しているのは、膨大な電気を使い、24時間営業のコンビニや、自動販売機をありがたがる私やあなたの生活態度だから。原発が嫌なら、たとえばクーラーの設定温度は27、28度に保つなど、必要以上の電気を使いすぎない生活を、わたしやあなたが心がける。そんな些細な部分から始めるしかない。
 もちろん、わたしやあなたが気をつけた程度じゃ、どうにもならないかもしれない。しかし、それがエネルギー問題の現実だというお勉強をして帰ってきた。