NHK-TV『課外授業 ようこそ先輩』〜子供たちの底力を引き出せる大人がいるかいないか

rosa412004-08-08

 子供たちの底力にスッゲェ〜圧倒された。まさに次々と芸術が生まれてくる瞬間を目撃させられた気分だった。 久しぶりにNHKの『課外授業 ようこそ先輩』を観た。珍しく日曜日の朝、8時過ぎに目が覚めたおかげだ。地上波1チャンネルで8時25分から57分までの半時間強の番組。以前は同じ日曜日の夕方6時15分からだったのに、去年あたりから変更されて、長らく遠ざかっていた。
 僕の大好きな銅版画家、山本容子さんが、母校の東京練馬区の小学校での課外授業で先生役をつとめる回だった。しかも再放送、ラッキーというほかない。しかもテーマがすごいんだな、「絵にならないモノを版画にしよう」。山本さんの初期のモノクロ作品にも、たくさんの絆創膏(ばんそうこう)や剃刀の刃などを描いた銅版画の作品がある。
 それらの作品群を、ぼくはてっきり、ウォーホールキャンベルスープの缶だけが描かれた作品の銅版画版だと思っていた。だが今朝の番組で、それは若かりし頃の山本さんが、『ピカソに勝つ』という野心を秘めて、できるかぎり絵にならないモノを絵にしようと取り組んでいたことを知った。あ〜あ、好きだとかなんとか言いながら、何も見えてなかったんだよ、オレは(^^;)。トホホ・・・。
 山本さんの「絵にならないモノを版画に」という問いかけに、最初はちんぷんかんぷん気味だった小学校6年生たちは、「身の回りにある、普段なら忘れているような、役に立たないモノを探してみて」という問いかけに徐々に反応する。ある生徒はプラスチックのスプーンの入っていたビニール袋、ある生徒はカードに穴をあけるパンチが切り取った丸い紙クズを探してくる。山本さんが「いいわねぇ」とさりげなくヒントを与えて、初日終了。
 
 二日目には各自が実にユニークな小道具をもって集まった。いや、子供のフレキシビリティって素晴らしいわ。ある少年は、工務店を経営するお父さんが使っている軍手一組を持参、まず軍手そのものに墨をつけて、そのまま白い画用紙に押し付ける。その次の選択がすごい。今度はその軍手が小さな手にはめて、再度、画用紙に押し付ける。そのコントラストが絶妙で、タイトルが「ぼくの手と父さんの手」。そのまんまなんだけど、お父さんの仕事ぶりをカッコイイと思っている彼の憧れが、きちんと作品になっていた。もう、この時点で、むんぎゅと心をわしづかみにされた。
 あるいは、ヘッドフォンのコードとジャックで微妙な曲線を何本も版画にとり、そこに耳栓の円い部分に墨をつけて印鑑みたいにぽんぽん押して、その●を赤や緑などの多彩な水彩絵の具でふちどり、つけたタイトルが「ピアノの音」とか。本や雑誌に貼る付箋(ふせん)に墨をつけて画用紙に押していて、ふとひらめいた少年は、それをロボットの目鼻口などに見立て、ロボットの絵を書き加えたりさ、洗濯バサミに墨つけてぺたぺた押してた女の子は、どうもそれがキツネに見えてきたらしく、黄土色を塗りだしたり。しかも、子供たちがすっごく楽しそうなんだな。目なんかギラギラしてて。
 どうよ、この天才ぶりは。これこそ、芸術の原点だよなぁ、すごいなぁ、うらやましいなぁと、さっそく、今度の週末にでもマネしてみることを決意した、お調子もんのオジサンでした。
 以前、野中真理子監督のドキュメンタリー映画『トントンギコギコ図工の時間』(id:rosa41:20040318)を、このスチャラカで紹介したが、彼らも小学校6年生だったな。その一方で、先の長崎県佐世保市の小学校で陰惨な事件をおこしたのも、同じく小学校6年生の女の子だ。  
  少々強引な展開だと思われるかもしれないけれど、子供たちの底力を引き出せる大人が周りにいるかいないかは、やっぱりすごく大きい違いなんだと、子供がいないぼくは無責任に考えてしまう。少なくとも、それを「子供たちの心の闇」だなんて言って、大人が放り出していてはいけない。少年法の処罰対象年齢を下げたって、たぶん何の解決にもならない。
エンジェルズ・アイ
山本容子さん作品一覧
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/search-handle-url/index=books-jp&field-keywords=%E5%B1%B1%E6%9C%AC%E5%AE%B9%E5%AD%90/ref=xs_ap_sai1_xgl14/250-9109499-1336268
●「課外授業 ようこそ先輩」web
http://www.nhk.or.jp/kagaijugyou/list/list1.html
来週15日(日)も再放送で、ジャズピアニスト山下洋輔さん。今度も期待大です。