勅使河原蒼風『樹獣』〜テレビ東京『美の巨人たち』〜命を活(い)けるという着想の軌跡

花のピカソと呼ばれ―華道を超えていった宗匠勅使河原蒼風の物語
 す、すっげぇ・・・、すごすぎる。何気なく観た番組に、心も身体もわし掴みにされた、振り回された、踏みしだかれた。岡本太郎さんじゃないけど、それこそ爆発する芸術だ。前衛華道「草月流」の創始者勅使河原蒼風
 戦局が悪化して花を活けられなくなり、敗戦後の荒涼たる風景の中で、「活けるものがなくなったら、石でも土でも活ける」と思い、焼けた鉄屑を活け始めた男。男はやがて地中深く眠る大樹の根っこを組み合わせ、削り、真鍮で覆った上からガスバーナーで焼き、『樹獣』の製作にいたる。きれいな花を超え、鉄屑や巨大な根っこ、さらには巨大な流木をペインティングする境地にまで、彼の作品製作は暴走していく。
 電柱をなぎ倒し、山肌を削り落とし、町中を水浸しにして、ウンコも涙もオシッコも焼酎も目薬も鼻水も一緒くたにして、それでもなお止まない台風のごとく荒れ狂う。その暴発のポテンシャリティー。ブラウン管からほとぼしる巨大なエネルギーに、僕はすっかり欲情して吠え立てる犬みたいになっちまった。


ああ、もっと知りたい、
         もっと蒼風を撫でまわしたい、
   飽きるまで舐めまわしたい、
               引きちぎり、
                      歯茎から血をダラダラ流しながら噛みしだきたい。

 
 草月流初級免許取得手前で投げ出した僕だけど、故・勅使河原宏さんの父親がここまで爆発した人だとは全然知らなかった。われながら堪らなく恥ずかしい無知の知ぶりだ。
 嗚呼、むちゃくちゃカッコイイ!できる限り早く、都現代美術館に『樹獣』を観に行って、そのオーラを全身に浴びたい。
 

●『美の巨人たち』〜勅使河原蒼風放送分の番組解説
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/picture/f_index.htm

●『花のピカソと呼ばれ』勅使河原純著 フィルムアート社(ASIN:4845999994)