シンクロニシティを逃すな!

rosa412004-10-21

 人間って面白いなぁ。しみじみそう思うことも、取材のひとつの醍醐味である。この日の取材でも、いい言葉を聞いた。シンクロニシティー。
 そもそも、あのユングが発語した言葉で「共時性原理」と訳される。それが意味するところはかなり多岐にわたるらしい。だが取材時に、その人が口にしたのは、「直感」や「予兆」という文脈で「シンクロニシティ」だった。
 

 去年、彼は仕事中に地下鉄で移動しながら、ふいに燃え上がる戦車の光景が浮かんだ。さらに、その戦車に関わる人たちのイメージが湧いてきて、涙までこぼれそうになったという。絵本のイメージはそのとき、彼の中で生まれていた。それをきっかけに、絵本を作り始めた。それができあがったとき、偶然、奥さんが買ってきた雑誌で、作家の代理人ビジネスを立ち上げた人の記事を見た。ちなみにそれは僕が書いた記事だったんだけど(^^)。
 彼はその人にさっそく連絡をとり、「絵本は扱ったことないんですけど・・・」と言われながら、強引に押しかけて作品を見せたら、代理人は直感でOKサインを出し、戦車を主人公とした絵本の営業にその場で出かけてしまった。
 その後、30社ほど断られた挙句(なぜなら童話や絵本業界で、戦車などの兵器ものはタブーとされていたから)、有名な出版社からの本になることが決まった。しかも刑事を辞めた翌日だ。刑事から絵本作家への転身は、そんな風に実現した。もちろん、親族などから猛反対を彼は受けた。だが譲らなかった。


 しかも今回は、彼が見たという代理人が紹介された雑誌の、まるで同じ欄で紹介される取材だった。ねっ、それってすごくない?(語尾上げ気味で)
 この奇妙な偶然の一致、そのつながり方こそがシンクロニシティだ。年齢をかさねるにつれてフットワークは重くなり、人はそんな偶然の芽さえ見逃してしまう。日常の中の直感や予兆を見逃さない軽さこそが大切だと改めて思う。