マスコミが伝えない、米国大統領選挙のもうひとつの死角

rosa412004-10-31

 やっぱり、まるで基本的なことを知らないんだなぁ。村上龍氏のwebサイト「JMM」のメルマガを購読している。それで、29日に「選挙後にアメリカが直面する構造問題」というメールが届いた。米国ワシントンDCに暮らす村上弘美さんからの「From Kramer's Cafe in Washington DC Vol.24」だ。
 村上さんは、米国ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院講師で、「PRANJI政策海外ネットワーク」のメンバーの一人。「PANJI」は海外で活動する研究者やビジネスマンたちによる政策情報ネットワークの名称だ。彼女のオピニオンは時折、日本のメディアはまるで伝えていない米国の実態や視点を伝えてくれる。今回のメールでもっともぼくの目がとまったのは以下の箇所だ。抜粋引用させてもらう。

これまで米国は、競争力の弱い産業を市場の原理に抵抗してまで保護してはこなかっ
た。その結果、軍需産業やそれに関連した特殊な産業を除いて、米国内の製造業の衰
退は著しい。競争力の弱い産業の衰退が加速する背景には、民主党にしろ共和党にし
ろ程度の差こそあれ、基本的には市場原理容認主義路線をとることがある。また共和
党政権下で、多くの製造業がインセンティブが高い軍需産業へシフトした結果、家電
といった分野に空白ができたことも要因だ。保護貿易主義色が強いといわれる民主党
政権でさえ、競争力のある分野で自国の市場を開いた上で、相手国の市場が閉鎖的だ
として他国の市場開放を迫るが、それも国際的競争力がある産業しか恩恵を受けられ
ない。競争力の強い産業の後押しはするが、弱い産業は見捨てられるのだ。

 これはぼくの個人的無知からくる誤解なら笑い飛ばしてもらいたい。しかし竹中大臣はじめ、この国の市場経済信奉者たちは、アメリカのこういう実態をきちんと踏まえた上で、市場原理という打ち出の小槌をふりかざしているんだろうか。金融業界や郵政改革はここではひとまず置くとして、ぼくにはどう考えても日本向きとは思えない。
 村上さんは家具業界など具体例を示しながら、日本で垂れ流されている、誤った大統領選後予測について端的に指摘している。

自由貿易」を信奉する共和党ですら保護貿易主義策をとらなければならないほど、な
すすべがないことも示している。一方ケリー氏自身も自由貿易主義者であり、中国のス
ケープゴート発言はしていない。つまり、ケリー氏が大統領になれば「保護貿易主義」
になり、ブッシュ大統領が続投すれば「自由貿易」という短絡的な理解は危険であろう。

 いよいよ、アメリカの大統領選挙が始まる。こんな視点から選挙後の行方をウォッチしてみるのもいいかもしれない。

Japan Mail Media(JMM)

PRANJI海外政策ネットワーク