宮崎駿監督『ハウルの動く城』を観る人たちの行列

rosa412004-12-01

 映画の日だったので、夕方からの取材前に、奥さんと新宿で『ハウルの動く城』を観る。コマ劇場左隣のあの映画館があつまる場所で、上映約20分前で、この作品だけが唯一70、80mの行列が映画館の外にできていた。映画以上に、その行列にとても「今」を感じた。映画以上に、オレにはそれがおもしろかった。他の映画館はがら〜んとしてるのに、そこだけ行列なわけ。
平日午後2時の上映ということで、若い女の子づれやカップル、おばさん連れと熟年夫婦とお客さんは二極化していた。もちろん、『千と千尋』を観たから今回も、という人も多いだろう。
 でも要は自分で探さず、評判の良さそうなもの、話題になっている映画をとにかく観る、流行を消費しておく。そういう空気だ。本が売れないといわれる中で、養老さんの『バカの壁』だけが300万部を超えるベストセラーになるのと同じ空気。別に映画でなくても、ゲームでもアイドルでもなんでもいい。映画でなければならない必然性をもたない映画鑑賞の行列。
 それがブームってもんだろう、というツッコミも聞こえてきそうだが、昔よりその傾向はさらに強まっていると思う。「老い」や「精神と肉体」、「共生」や「正義と悪」、宮崎アニメが観る者に投げかけてくるテーマは今回も健在だけど、グーグルで検索すると、アフレコをしているキムタクや倍賞千恵子の声優としての是非の方が、ネットでは盛り上がっていたりするんだもん。道端の石の魚だってあきれるよ。
 ある映画だけがやたらと一人勝ちする中で、他のクリエイターは次回作を作る機会を奪われ、結果的に映画の作り手たちは減り、空洞化がすすむ。
 それは出版の世界でも同じだ。ヒット作を出した小数の書き手にはオファーが集中して、その他大勢の新人には発表する機会がなかなか与えられない。無名だからという理由で。勝ち馬に乗ることが優先され、編集者に洞察力がもとめられない。企業が新人を育てる余裕を失い、新卒なら即戦力になりうる要素を兼ね備えた人、それ以外なら、契約や派遣社員で当座の仕事をこなす風潮ともしっかりつながっている。