浅草ロック座体験(1)〜「紙テープ男」の愚直な愛

 ノンフィクション作家、神山典士さん主催の忘年会が浅草であった。しかも浅草ロック座隣のお食事処が会場で、ロック座の20分鑑賞付きという趣向だった。たまたま、同じテーブルになった初対面の男性1名、女性3名とともに、第二次鑑賞隊としてロック座へ乱入。ぼく自身、ストリップ観劇は今回が2回目。ちなみに、1回目は20代の頃だった。女性陣にも誘われたので勢いで参加することにした。
 会場はまばらで、50代から70代の男性客ばかり10数人。まず面白い発見があった。後で女性陣も指摘していたが、回転する直径2mほどの円形ステージで、踊り子さんの開脚場面になると、その回転で自分の正面に踊り子が来る場面に備えるかのように、最前列に陣取った男性客たちが一様に、上半身を動かしてみせる。それが誰かが、せぇーのと掛け声でもかけているみたいに、ぴったり同じタイミングなのだ。ある人は首をかしげ、ある人は座席の背もたれに身体を強く押し付けたりして、それぞれが好みのアングルを微調整していた。
 踊り子と正対する瞬間、彼らには溜息も感動の吐息もない。ひたすら静かにじっと見つめる。しかし踊り子も手馴れたもので、ゆっくりと回転するステージ上で、微妙に開脚度合いを変えてみせる。静かなる駆け引きが、その暗闇で取り交わされる。無邪気で、密かに貪婪(どんらん)で、切なきもの。
 だが、それは骨董でも愛でるかのようで、いわゆるギラついた情欲とは違う。いや、もしかしたら身体の奥底でたぎらせているのかもしれないが、そんな気配はまるでうかがえない。アダルトビデオが描く「エロ」とは違う、「淫靡(いんび)」な世界がそこにある。
 さて、こんな文章にグーグルはどんな広告を付けるんだろうか。楽しみ!(つづく)