庭で泣く(2)京都・東福寺方丈庭園

rosa412005-02-03

 大阪出張の仕事を素早く片付けて、一路京都へ。目指すは東福寺の方丈庭園だった。方丈庭園の説明ははぶく(黄緑色の部分をクリックしてほしい)。ちなみに方丈とは、住職の居室のこと。
 冬の京都の平日は閑散としていて、庭園を見呆けるには好都合だ。青空をながれていく雲と太陽のうつろいなどをボーっと見る。肩の力を抜いて、ただ心の扉を無防備に開けておいてやる。それだけでいい。
 この空は東京にだって同じようにあるよなぁと気づくと、ただ流れる雲をながめやる余裕がない普段の自分が、まず恥ずかしくなる。余計なものがどんどん抜け落ちていき、心も身体も空っぽになっていく。あの感じがたまらない。
 枯山水のある庭園は数々あれど、方丈という建物の四方に庭園があるのは、ここ東福寺だけらしい。どれも趣向をこらしているが、もっともぼくが心惹かれたのは東庭。右上写真がそれだ。
 東司という重要文化財のトイレ用の柱石で余ったものを、北斗七星に見立てたという。いわばリサイクル。その石も高さをまちまちにして、グラデーションをつけている。秀逸な俳句みたいに、端的でクールなのに、とても豊かな情感がある。そこがカッコイイ。
 もっとも大きな南庭が海で、通路でへだてられて隣接する東庭は、天の川と北斗七星がデザインされている。いわば空と海が地続きになっている趣向だ。そのダイナミックな着想もすばらしい。
 作庭家の重森三玲は、日本画、いけばな、お茶を一通り学んだ後に、庭園を独学した人。勅使河原蒼風らと革新的ないけばな創作運動を起こしたこともある人らしい。イサム・ノグチとも交流があったという。この方丈庭園は、今からおよそ66年前の作品だが、少しも古臭くはない。庭は苔むしても、デザインはまるで苔むしていない。
 苔と柱石の小ぶりな市松模様の北庭(写真下)、白砂とサツキの刈り込みで季節感を取り込んだ大振りな市松模様。そのコントラストはとても音楽的だ。
 というか、ダイナミックな南庭を主旋律ととらえれば、それぞれ転調する三つの庭と合わせて、ひとつのメロディーみたいに見えてくる。音楽によって包囲された豊穣(ほうじょう)ってわけだ。
●「庭で泣く」(1)大徳寺・竜吟亭(id:rosa41:20040702)