クラムボン『まちわび まちさび』〜原田郁子の言葉のしなやかな握力
- アーティスト: クラムボン,原田郁子
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2000/10/25
- メディア: CD
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クラムボンのヴォーカル原田郁子の詩の世界は多彩で楽しい。
1曲目の『ドギー&マギー』は、谷川俊太郎さんの言葉あそびみたいに始まる。
ユラメキ
シシュンキ
トキドキ
タメイキヒラメキ
マバタキ
トキドキ
トキメキ
タイトル曲の「まちわび まちさび」は、変容していく駅前(あるいは日本)の風景を「わび・さび」にひっかけて、アップテンポなメロディにのせている、
だんだん 駅前がもう
だんだん わびしくて
だんだん さびれてもでも
だんだん においのあるまち
(中略)
ぜんぜん 駅前がもう
ぜんぜん わびしいほど
ぜんぜん さびしいほどに
ぜんぜん においのないまち
で、さっきからリピートモードでずっと聴いているのは、8曲目の『246』。別れの予感を漂わせる男女の心情を、車窓の光景とだぶらせて、短いセンテンスを重ねながら見事に描き切っていて、せつな痛い。
(前略)
気まずいながら 笑っていたの
赤い嘘も またひとつそっと
君に沈むよ ハレルヤおしまい 誰かの声
おしまい 長い季節
ハンドル 切るたびに
目のまえの つづき広がるのふみこむから 消えてゆく はかないシーン
ふみこえると 消えてゆく 白いライン
(後略)
ことさら説明するまでもないが、ブレーキを踏む行為と、何かを踏みこえて(あるいは踏みはずして)しまった二人の関係を、さりげなくダブらせているサビの部分が、原田の、ロウソクのゆらめく炎めいたヴォーカルで歌われるとき、シャボン玉みたいに何かが弾け終えている。当分リピートしてしまいそうだ。