ずいぶんと手近な楽園
朝方まで原稿を書きあぐねて、昼前に起床。食事をすますと、あんまりいい天気だったので、近所の遊歩道に日光浴と散歩に出かけた。先日は二分咲きだった、山吹が咲き乱れていた。この時期に咲く花の中では、ハナミズキと並んで大好きな花だ。その五枚の黄色い花びらは、竹内結子にあい通じる、清楚な可憐さと強さを感じる・・・と、オジサンは勝手にそう解釈して満足している。放っておいてくれ。
ヘッドフォンから、佐野元春の『恵みの雨』の歌詞が流れこんでくる。(黄緑色部分をクリックすると、全曲視聴画面になります。職場勤めの方は、ご注意下さい)
「一日中働きづめで さすがに気が滅入った
終わりがないような そんな気がして空を蹴った
わが道を往け わが道を往け 」
『THE SUN』の3曲目だ。ゆっくりと歩くリズムと絶妙に合う曲だ。
五月のような陽気だった。頬をやんわりとなでる風もさわやかだ。カイドウも満開で、小ぶりなハナミズキは、そのつぼみを少し開いている。白、ピンク、黄色など、日差しを受けて、さまざまな色彩が高らかにハミングしている。肩こりがすっと消えて、体にパワーが充電されていく。
白いブラウスとベージュのパンツスタイルの、八十年配のオバアサンが、アパートの玄関口に体育すわりをして、目を細めながら空をあおぎ、この陽気を満喫していた。
もう少し歩くと、今度は車椅子の六十年配のオバサンが、濃いピンク色で少し毛羽立った花びらの木の下で、右手を顔の前にかざして、空を見上げていた。まるでモネが描きそうな絵みたいな光景だった。
春の力は絶大で、人の心を浮き立たせずにはおかない。目には見えない、いのちといのちが共振している。
「答えはまだなくていい
錆びてる心に 火をつけて
シャランランラッラ わが道を往け」
元春の歌声に全身で感応する。そうだ、答えなんてないから要らない、心をひらいて錆びつかせないこと、それだけだ。
何回となく聴いてきたCDだけど、今日はこの『恵みの雨』だけを何度もリピートする。日差しの暖かさと、元春のスピリットに力がわいてくる。まるで楽園を歩いているみたいだ。自分を元気にしてくれるものは、ずいぶんと手近に、取るに足らないものの中にある。