めざせ、オーティス・レディング!

「この人、カッコよくないけど、カッコイイんだよね」
 と奥さんがぽつりと言う。うまいこと言うなぁ、おれはそう感心した。
 昨夜、赤坂憲彦と高嶋ちさ子がホストをつとめるBSの音楽トーク番組に、上田正樹が出ていた。「I miss you」というテーマで、歌を即興で作ってほしいと赤坂から頼まれた上田は、キーボードに触れた瞬間に、「I miss you〜」と歌いはじめた。少しも詰まることなく、キーボードが奏でる旋律に、あの独特のR&Bな歌声がからまっていく。しびれた。
 まるで缶コーラのタブを引き上げると、プシューッと音を立てて、コーラの匂いと泡があふれるみたいに、まさにあのタイミングで旋律と歌声が瞬時に、そして次々と上田からこぼれてきた。
 それを見て、安い卓上キーボードを買うことにした。何事も即決が肝心だ。子供の頃、ピアノを習っていた奥さんに、まず、テーブルの上で「ドレミファ・・・」の指の動きを習う。これがけっこう難しいんだ。だって、そんな指の使い方を、今までしてこなかったんだから。
 とりあえず、両手でのドレミファを2週間でマスターしたら、安いキーボードを買おう。春は始まりの季節だし、ちょうどいい。まず、それで音感を鍛えたい。そうだ、キーボードの弾き語りで、オーティス・レディングを歌いたい。まずは食前食後に練習する。習うより慣れろだ、とここで宣言することにした。