ブルーチップ(優良企業)とグリーンチップ(環境関連で優れた技術をもった小さい企業)のパートナーシップというエコファンドの視点

あおくんときいろちゃん (至光社国際版絵本)

あおくんときいろちゃん (至光社国際版絵本)

 
 不思議な偶然だ。15日の日誌で建築家のヨコミゾマコトさんの「富弘美術館」について書いた。その大小バラバラな部屋の集合体としての調和に、ぼくは21世紀的な可能性を感じると。
 そして昨日、一冊の冊子がとどいた。ダイヤモンド社で出している新刊案内とコラムなどが掲載されているものだ。和田裕美さんの担当編集でもある、同社書籍部の副編集長のSさんが送ってくださった。先日、ここで何度か書いている筑紫みずえさんを、Sさんにご紹介したのが縁で、彼女が筑紫さんにインタヴューされて文章にされたらしい。『SRIは世界を変える』と題されたその文章は、とても簡潔に筑紫さんの軌跡をまとめつつ、彼女の懐深い考え方がしっかりと書きとめてあった。さすがである。
 その文章の中で、筑紫さんがエコファンドを概念を、優良企業(仮称ブルーチップ)と環境関連で優れた技術をもつ小さな企業(仮称グリーンチップ)を引き合いに、語っている部分がある。それを読んでぼくはびっくりした。こりゃ、シンクロニシティ(必然の偶然)だって。

ブルーにグリーンをかけると青緑になりますが、青しかないよりも青緑もある方が、私はいいと思う。青緑というのは、小さいけれど環境問題をブレイクスルーするような新しい技術や、いいビジネスモデルを持っているような会社(店頭公開以上)と大きなブルーチップ(優良企業)との組み合わせです。小さい企業(グリーンチップ)は不安定だけれど大変なリターンが得られる可能性があり、ブルーチップはリターンは少ないかもしれないが安定的なもの、という二つの組み合わせで青緑というわけです。
 エコファンドはブルーチップだけではなく、小さな企業もきちんと見て組み入れてます。ブルーチップな企業も青緑でなければと、緑のネタを探そうとするでしょう。そこで小さいところと組むとか、発注するとかいうことによって、全体をグリーンにしていけると思います。

 これは大企業と小企業の対等なパートナーシップ観だ。エコファンドに小さな企業も入っていることはぼくも知っていたけれど、筑紫さんがそこまで対等な関係を見ていたことは知らなかった。それはヨコミゾさんが美術館の構造として考案されたものと、まったく同じ視点に立っている。この偶然はシンクロニシティでしょう、やっぱ。
 筑紫さんのグリーンチップとブルーチップの文章を読みながら、ぼくの脳裏にもうひとつ浮かんだのは、絵本作家レオ・レオーニの『あおくんときいろちゃん』。青くんと黄色ちゃんが仲良く遊んでいるうちに、部分的に互いの色が混じりあい、黄緑になってしまう。そのまま、それぞれの家に戻ると、青と黄色のそれぞれの家族からひどく怒られる。しかし最後には、お互いの家族も友だちになり、みんなが黄緑色になるというストーリーです。この物語までいかなくとも、非均質なものが互いを尊重して調和しあうという富弘美術館や、エコファンドの視点は、その延長線上にある。
 優秀で均質な人材を集め、家族主義の幻想の下で高度成長を牽引してきた日本企業。だが、最近はその均質さゆえに、企業トップの暴走を容認し服従してしまう無責任体質が明らかになる不祥事が相次いでいる。もっと言えば、それは第二次大戦の日本軍の暴走や、オウム真理教サリン事件にも通底する。あるとき不意に思考停止してしまい、ファナティック(狂信的)へと一気に傾斜しがちな、日本人社会の悪癖なんだとぼくは思う。だから均質から非均質への転換とその調和という視点にこそ、ひとすじの希望を感じる。