勅使河原蒼風著『瞬刻の美』〜「一字が万字」の活(い)けられた言葉

rosa412005-05-21

 右の写真は、1957年に蒼風が大樹の根を活(い)けたものだ。題して「樹獣」。この作品をぼくはテレビで初めて観て、ぶっ飛ばされた。昔も今も、この「樹獣」は前衛でありつづけている。もう50年近くの時間がすぎているのに、少しも古びていない。
 作品集『勅使河原蒼風 瞬刻の美 (Art & words)』には、そんな蒼風のエッセンスがつまっている。それは華道だけでなく、あらゆる分野のクリエイターにとっての聖典だと思う。そこで蒼風は「ことば」をも活けている。
「眼をつぶれ 視覚にただ、すがるなんて
 眼をつぶれ 心の目が開く」


「むしろ、その反対にどこにでもあるもので、
 自分でもよく知っているはずのものが、
 違った使い方をされているときに、新しさを感じる。
 それがほんとうにわれわれの望む新しさである。」


「いけばなは、線と、色と、
 塊(かたまり)とに見ることができる。
 この三つがいろいろの分量をもって、
 無限に動きをあらわすのだ。」


「いけばなは スキ間の芸術でもある。
 枝と枝の間、花と葉の間、
 茂りと茂りとの間。
 枝をいけ、花をいけるのだが、
 つまりは そこにできるスキ間を
 つくっているわけだ。」


「美しいものを 惜しむ幸福もある。
 美しいものを 思う幸福もある。
 美しいものを 捧げる幸福もある。
 美しいものを 生む幸福もある。」