勅使河原蒼風著『瞬刻の美』〜「一字が万字」の活(い)けられた言葉
右の写真は、1957年に蒼風が大樹の根を活(い)けたものだ。題して「樹獣」。この作品をぼくはテレビで初めて観て、ぶっ飛ばされた。昔も今も、この「樹獣」は前衛でありつづけている。もう50年近くの時間がすぎているのに、少しも古びていない。
作品集『勅使河原蒼風 瞬刻の美 (Art & words)』には、そんな蒼風のエッセンスがつまっている。それは華道だけでなく、あらゆる分野のクリエイターにとっての聖典だと思う。そこで蒼風は「ことば」をも活けている。
「眼をつぶれ 視覚にただ、すがるなんて
眼をつぶれ 心の目が開く」
「むしろ、その反対にどこにでもあるもので、
自分でもよく知っているはずのものが、
違った使い方をされているときに、新しさを感じる。
それがほんとうにわれわれの望む新しさである。」
「いけばなは、線と、色と、
塊(かたまり)とに見ることができる。
この三つがいろいろの分量をもって、
無限に動きをあらわすのだ。」
「いけばなは スキ間の芸術でもある。
枝と枝の間、花と葉の間、
茂りと茂りとの間。
枝をいけ、花をいけるのだが、
つまりは そこにできるスキ間を
つくっているわけだ。」
「美しいものを 惜しむ幸福もある。
美しいものを 思う幸福もある。
美しいものを 捧げる幸福もある。
美しいものを 生む幸福もある。」