被害者の視点と加害者の視点〜日英メディアの戦争報道

 広島、長崎の原爆投下をテーマにしたメディアの企画が増えている。が、どうも日本のは被害者話が多い。
 英国BBCのweb「アジア・パシィフック」版では、くしくも長崎爆弾の「生存者物語」と、第二次大戦中の日本軍が組織した従軍慰安婦問題の両方が、きちんと取り上げられている。この記事には、17歳から日本軍に従軍して中国の北東部に「慰安婦」として連れて行かれた80歳の韓国人女性のインタヴューが掲載されている。(グーグルのツールバーダウンロードすれば、英単語にカーソルを合わせると、日本語訳が表示される)
 記事によると、アメリカ軍などの資料などから、従軍慰安婦は約20万人にもおよび、朝鮮半島だけでなく、台湾やフィリピンなど日本が占領していた国の女性たちも、同様に組織的に従軍させられ、慰安婦として性的虐待をうけたとしている。
 一方、1995年に日本政府が「アジア女性基金」を創設、(ここが大切だが)『個人からの寄付金を募り』、364人の韓国・台湾。フィリピンの女性たちに、総額3万ドルの補償金を与えてもいる。あくまで国家としての公式謝罪と補償はしていないという、言い逃れっぷりだ。同財団では、従軍慰安婦問題について反日感情が強いという韓国社会の圧力で、従軍慰安婦たちは、その補償金さえ手にできないでいる、とも伝えている。
 今なお、敗戦ではなく、被害者意識がにじむ「終戦」という言葉に逃げ込んでいる国の戦争特集では、BBCのようなバランス感覚が見当たらない。