『おい、小池!』の行方が気にかかる

 ここ数年間で、一番のキャッチ・コピーだ。なにせ、殺人事件の小池容疑者の顔写真の右隣に、
『おい、小池!』
である。こういう手配写真では、めったにない呼びかけ調。しかも、それだけ。数ヶ月前、大阪で見た「チカンはアカン」の2・5倍は優れてる。まぎれもない名作だ。
 東京メトロ東西線行徳駅につくなり、トイレに向ったぼくは、この絶妙のキャッチ・コピーに足を止めた、いや、止めさせられた。で、しばらく考え込んだ、そのコピーの後に続く省略されたセンテンスをあれこれと。
「おい、小池!絶対捕まえてやるからな!」
「おい、小池!奥さんと子どもは預かった」
「おい、小池!父危篤、すぐ帰れ 太郎」
「おい、小池!栄子とは親戚か?」
「おい、小池!百合子は当選したぞ」
「おい、小池!や 蛙(かわず)飛び込む 水の音」
 ・・・・強気調から七・五調まで、いろいろと想像してみた。つまり、それほど行間があるコピーで、考えれば考えるほど、その出来の良さに感心させられた。
 しかし犯人に直接呼びかけるコピーの狙いとは、そもそも何なのか?犯人がこのポスターを見て、自分から電話してくる可能性?・・・・どう考えてもそれはないよな。
 となると、やはり意外性のあるコピーで、人の目を引きつけて、犯人についての情報収集をうながすのが目的か。あるいは、いまどき流行りの、冗談っぽいCMやコピーを、ただマネしてみたかっただけなのか・・・。見ず知らずの、縁もゆかりもない小池さんのことが、妙に気になってしまい、まるで落ち着かない。
「おい、『おい、小池!』のコピーを考えた人!」