レントゲン写真みたいな質問

「あなたの人生に必要な4つの『ボール』とは何ですか」―仮にあなたがそんな質問を受けたら、どう答えるだろう?ここで言う「ボール」とは、「エッセンス」や「要素」といったことの比喩にすぎない。 
 今月から来月にかけて、あるアメリカ人経営者をインタヴューする予定がある。彼にとっての「4つのボール」とは、「個人としての自分」「夫としての自分」「父親としての自分」「仕事人としての自分」「社会貢献する自分」だという。毎年、それぞれについて年間目標を立て、それを月ごと、日ごとに割りふり、年間目標の達成を目指すという。ジャグリングのように、「4つの自分」をそれぞれうまく操(あやつ)りながら、仕事と私生活のバランスをとるという考え方だ。
 恥ずかしながら、そんな発想がぼくにはまるでなかった。それで「一年の計は元旦にあり」とばかりに、試しに彼の「4つのボール」で、それぞれ目標を書きこんでみた。すると、「個人」としての目標なら「○○がしたい」、「○○ができるようになりたい」といくつも思いつくのだけれど、それ以外がじつに頼りない。
 たとえば、「仕事人としての自分」についての目標ならいくつか書けるが、「夫としての自分」「社会貢献する自分」となると、我ながら驚くほど思いつかない。とりわけ社会貢献となると、友人らと立ち上げたカフェでのイベント企画ぐらいか。子どもがいないから、「父親としての自分」という目標もない。
 その問いかけは、まるでレントゲン写真みたいに、一見、社会に対して開いている職種のようで、じつは限りなく閉じて偏っている、自分好きな(^^;)「引きこもりライター」のぼくを暴いてくれた。