サイエンス+フィクション展(お台場・日本科学館)〜他者への嫌悪は、社会崩壊の恐怖感の裏返しという視点

rosa412006-02-15

 午前中にひと仕事終わって、睡眠不足の割に元気だったのでお台場へ。左アンテナで茂木さんが書かれていた「サイエンス+フィクション」展が目的。チラシによると「今日の世界をとらえるさまざまなテーマを、科学と芸術という異なるアプローチによって表現する」とある。
 たとえば、脳の認知プロセスを解説するコーナーでは、奇妙な帽子型のボックスに頭を突っ込み、視覚や聴覚の認知プロセスをビジュアライズして見せてくれる。そのボックスをかぶるというプレゼン方法に、アートが介在しているということだ。
 ぼくがもっとも気に入ったのは、「国際化の中で自己と他者の境界はどこにあるのか」のセクション。
「他者が異質なものであることは疑う余地がなく、それゆえ他者性は普遍的であり、社会的経験である」
「寛容とは、加速度的であり、往々にして両面性をもつ近代化のプロセスを経る中で、紛争を回避させるだけでなく、他民族社会で起こりがちな紛争を無効にする。(中略)その基本とは共有の原則について対立しながらも、話し合い、相互に健全と平等を尊重することである」ヴィルヘルム・ハイトメイヤー(紛争問題研究家)
 異質なものを無視あるいは排除することへの戸惑いが、めっきり陰をひそめている世の中には、もっとも足りない視点だと思う。
 右上の写真は各コーナーにおかれているリスニング・ソファ。そこに組み込まれた糸電話式のコップ型のイヤホンを引っ張り出すと、アーティストの作品解説が音声で流れる。
 先に引用したハイトメイヤーの作品解説は、特定の集団に嫌悪感を抱く構造に言及。オレンジソファに座りながら、コップ型イヤホンに耳を澄ます。
反ユダヤ主義」から「外国人嫌い」、さらには「イスラム嫌い」へと、その嫌悪感が移り変わっていく傾向が現代的、ハイトメイヤーはそう指摘する。「他者への嫌悪を促すものは、社会的評価の偏りであることはもちろん、社会崩壊への恐れが強いほど、特定集団への嫌悪感が強くなる」―とても切れ味鋭い洞察力にドキドキした。カッチョイイ〜!
 この一文が聴けただけでもじゅうぶん来た甲斐があった。このリスニング・ソファは、他の美術館でもぜひ見習ってほしい。これも、もちろんアート。同展は今月27日まで。