三谷幸喜監督作品『THE有頂天ホテル』〜名演の落語のような作品

 普段は偉そうな殿様の小心者さやお間抜けぶりを、あるいは、持ちなれぬ大金が転がり込んで我を忘れる貧乏人やら。ただ、他人を笑い飛ばすだけでなくて、笑いながらも懐深く抱きしめる。人の業(ごう)を肯定する。それが名演の、いい落語だ。
 三谷幸喜監督作品『THE有頂天ホテル』は、まさにそんな、いい落語みたいだった。弱みも強みもあって人間で、それぞれが自分らしく生きればいいんじゃないの。三谷さんお得意のドタバタ喜劇だけれど、観終わって映画館を出ると、そんなテーマが胸にじわじわとせり上がってくる。
 オツムの弱いコールガール役の篠原涼子にシビれた。あとは松たか子の中国語の台詞部分もイカシてるし。