武田徹著『「隔離」という病い―近代日本の医療空間』

「隔離」という病い―近代日本の医療空間 (中公文庫) 
 ハンセン病患者の隔離政策の下、日本各地に生まれた療養所と、大東亜共栄圏の出発拠点となるはずだった満州国。どちらも一見、風光明媚な場所に作られていながら、実際にはそこで暮らす人たちの暮らしの質は一切考慮されていなかった――その天と地ほど出自の違うものが、生活者非尊重の空間設計として似ているという部分を今日読んだ。斬新でスリリングな視点だと思う。
 ハンセン病療養所を、隔離政策ゆえの非人道的施設に閉じ込めず、国家権力がデザインする、生活者を尊重しない共同体として、満州国と並列にとらえる着想に、武田さんの面白さがある。常識や先入観にとらわれない、なんて口先で言うことは簡単だけれど・・・。