『新・庭園倶楽部』(ワタリウム美術館)〜「然(さ)び」という考え方の妙味

日本の庭園 - 造景の技術とこころ (中公新書(1810)) 
 高温多湿のモンスーン気候下にある日本では、庭の芝や石が苔(こけ)むしたり、石にカビが生えたりする。それは湿度の低い西欧ではありえない現象らしい。
 苔やカビはいわば腐っていることなのだが、そういう形で時間が積み重なっていくこと(時間の積層性)に「美」を見出すというのが、日本における庭園の『然(さ)び』の定義だと、進士五十八(しんじ・いそや)東京農業大学教授(『日本の庭園』の著者)は話す
 面白い。「アンチエイジング」なんて見かけを取り繕う言葉が、ふにゃふにゃと漂う世の中とは正反対の美意識。
 しかも、「さび」とは「寂び」だとばかり思っていたので「然(さ)び」なのにも驚いた。「然」は「自然」「天然」などの「そのままである」の意味だろう。つまり、「然(さ)び」という言葉は、時間の積層性に「美」を見出すと同時に、強い現状肯定の考え方ということになる。・・・深い。また、「庭園」という言葉は日本で生まれた言葉だというのも、大きな発見。
 今夜からワタリウム美術館で06年度の『新・庭園倶楽部』講座が始まった。