石川直樹トークショー(青山ブックセンター)〜「世界」という物語を読む眼差し

rosa412006-05-07

 好奇心が旺盛な方だから、あちこちうろついて、いろんなものを見て、いろんな人に会ってみたいとぼくは思う。反面、そんなぼくの弱さは、ふだんの日常にこそ本質的なもののすべてはすでにあって、それとどう取っ組み合うのかという意識が中途半端なこと。
 冒険家、石川直樹さんの話を聴いていて、改めて自分のそんな弱さが思い起こされた。ニュージーランドの森の中で、ふいに目の前のひとつの葉やひとつの枝が、すべての森につながっているのを直感してから、彼の興味の対象は「神話」や「壁画」へと向かい出す。

北極のイヌイット族や、ミクロネシアで暮らす人たち。外国を知らず、自分たちの場所を生涯離れることがないのにもかかわらず、なぜか世界のすべてを知っている人たちがいるんです。鳥の動きや雲や潮の流れ、星の動きを多角的に統合して、自分たちの航海術に収斂(しゅうれん)してしまう人たちがいます。彼にはハイテクの羅針盤もレーダも必要ない。そういう人たちと出会うことで、ぼくの旅の方向性は自然と変化していきました。

 そういう人たちは昔も今も、持続可能な社会のために、けっして乱獲せずに必要な量だけの動物を狩り、世界を知るための「神話」を語り継ぎながら生きている、と。小柄で、大学生めいた風貌の石川さんの眼差しの先はとても広大だ。