ジャン=フランソワ・フリオ『大いなる休暇』〜遠い島の話が私たちの社会とダブる理由

大いなる休暇 [DVD] 
 とても映画らしい映画を観た。カレー屋「えすと」の井上さんから送ってもらったDVDだ。カナダのケベック州にある過疎の島に工場誘致話が持ち上がる。かつて漁業で栄えた島はもはや廃(すた)れ、大半の住民が失業保険で生計を立てている惨状だったからだ。
 だが誘致先には医師が必要と、無医村の島をあげての医者の誘致と、ひと月限定のバカンスがてらで訪れた男性医師に島を気に入ってもらうため、島民たちの涙ぐましく、笑える一大作戦が始まる・・・。
 だが、わたしたちの社会から見るとけっして他人事と笑ってばかりいては済まされない。一見、のんびり、ほのぼのとした映画にも見えるが、いまどきの資本主義社会への暗喩が隠されているように思えて仕方ない。
 たとえば、いたずらな流行への追随、アメリカンスタイルの趣味の悪い模倣、公然たる盗聴とか。もっと言えば、嘘に嘘を重ねて逮捕される有名企業幹部や政治家、「効率」や「成果」をひたすら求めて歪んでいく組織や、人間関係。ほらね、私たちの社会ともじゅうぶん重なる。
「毎日嬉しいことが起これば、この島を好きになるだろう、お前は何が起これば嬉しい?」―そう問われた島の銀行員が出したアイデアは、毎日決まった場所で紙幣を拾えるというアイデア。彼はこれを実践する。でも、この幸福観はオレだってじゅうぶん嬉しいんだも―ん!ビッグ・リボウスキ【廉価版2500円】 [DVD] 
 コーエン兄弟の映画『ビッグ・リボウスキ』(無職の中年男が大富豪と間違われ、ある誘拐事件に巻き込まれる物語)を少し思い出してしまった。
 さて、井上さんにはどんな映画を送ろうか。