「地球の食卓」トークショー(青山ブックセンター)〜豊かさへの視点

 地球の食卓―世界24か国の家族のごはん
 世界24カ国の家族の「一週間の食料」を見て回る――そんな着想から生まれた写真集が「地球の食卓」だ。その本を作った写真家ピーター・メンツェルと、女性ライターフェイス・ダルージオのトークショーに参加した。
 たとえば、ブータンの一週間5ドルの食卓と、一週間200ドル超のアメリカの食卓がスライドに登場する。
 だが、アメリカの食卓に並ぶ数々のジャンクフードとコーラの山と、明らかに肥満な家族を見ると、換金できない「豊かさ」の質がそこで露になる。必ずしも、お金持ちの先進国の食卓のバランスがいい、とは限らないという現実が面白い。その一方で、アメリカのジャンクフードを着実に増やしている日本の食卓。マクドナルドやケンタッキーのフランチャイズ店舗が、増殖しつづけている写真もあった。
「世界の食卓を見たことで、何かあなたの食環境は変化しましたか」
 ぼくが質問しようとしたことを、他の人にされてしまった。写真家ピーターの答えはこうだった。
「ほんの少し変化したと思います。オーガニックなものをもっと摂るようになったことと、腹八分目ということを意識するようになりました」
 英語にも「腹八分目」っていう言葉があるんだ、おおっ。きわめてシンプルな質問を片手に、世界の多様さと、「豊かさ」の画一性、さらにはその「貧しさ」をも露にしてみせる。なかなかテクニカルな知性を学ばせてもらった。