NHK『プロフェッショナル〜仕事の流儀』〜明日のために(今日の)仕事ができる人

プロっていうのは、僕は今日のためじゃなくて、本当に明日のために仕事ができる人。自分のためじゃなくて、他人のために仕事ができる人。だから明日の、人のために仕事ができる人

 イタリアで活躍する、カー・デザイナー奥山清行の言葉にグッときた。とりわけ、「明日のために(今日の)仕事ができる人」―というフレーズが胸にささったのは、そういう目線がぼくに希薄だからだ。
 この『プロフェッショナル』は好きでよく観ている。脳科学者・茂木健一郎氏と、住吉美紀アナウンサーのツッコミもいいし、他のドキュメンタリー番組とくらべても、じつに粘り強い取材を重ねていることがわかる。ゲストの話だけをうかがうだけでなく、それを裏付けるために、それぞれの仕事の流儀の瞬間をこそ、映像をおさめようとする努力も一緒に映っている。そんな場面は、制作者の都合よくは表れてはくれないからだ。
 この日も、「車のデザインって、水や食べ物とくらべると、なくても困るものじゃないですよね」と勇敢なツッコミを入れると、「なくても困るものじゃないからこそ、むしろ妥協は許されないんですよ」と奥山氏は即答。それを受けて、茂木氏が「人間の脳でいうと、水や食べ物といった生命に不可欠なものを求める部分と、デザインなどの創作物に感応する部分は、まったく同じ場所なんですよ」(この発言はぼくの記憶力低下のため正確さを欠く、あくまでも言葉のニュアンスと理解してほしい)といった趣旨の発言でまとめた。奥山氏も「これはいいことを聞いたな」とポツリ。 見事なアンサンブルだった。