宇多田ヒカル『DISTANCE』〜「一人じゃ孤独を感じられない」という感性(2)

First Love
 宇多田ヒカルといえば、16歳でのデビュー曲にしてミリオンセラーの、『Automatic』について触れないわけにはいかない。1枚目のアルバム『First Love』(右写真)に収録されている。彼女のファンではない私でさえも、あの曲のサビのリフレインは印象深かった。窮屈そうにかがみ込み、全身でリズムを刻みながら歌うプロモの映像と、『It's Automatic〜』の歌詞は、どちらも斬新だったから。
 少女の切なく揺れる恋心を、その対極の「クールな機械」を連想させる「Automatic」と対置させる歌詞は、抜群の歌唱力ととも相まって、とてもカッコよく私の心に響いた。
 ただ、どうやらそれは、私が英語オンチだったせいだと最近知った。
 うちの奥さんに聞くと、「Automatic」は「無意識に」といった意味でも、英語圏の歌などでよく使われれているらしいからだ。つまり、米国育ちの宇多田が、恋心の切なさを「Automatic」と歌うことはとても自然なのだ。ただ、私のように誤解して、その言葉遣いの新しさに驚かされた日本人は、当時かなり多かったはずだ。
 ネイティブ・スピーカーのセンスのままに、英語の歌詞をストレートに混ぜる。いたずらに説明しない。
 彼女の言語感覚は、18歳で出した2枚目のアルバム『DISTANCE』の「Addicted to You」でも、より明快に引きつがれている。そして私の直感は正しかった、なぜならそのアルバムに圧倒されることになるからだ。