身の周りにある「オレ安いよ」詐欺

 食品の裏側―みんな大好きな食品添加物
 先日、奥さんに頼まれて、豚しゃぶ用にごましゃぶのタレを買いに行った。奥さんの言ったA社製のものの隣に、それより50ミリリットル多くて、およそ100円も安いB社製のごましゃぶタレが置いてあった。どうやら新製品らしいが、それはどう見ても臭い。より多いのに、かなり安い。
 両方の裏書を見て、その謎があっさり解けた。B社のものは、A社のそれの2倍くらい食品添加物が書かれていた。それがB社製が50ミリリットル多くて、およそ100円も安い理由だった。もちろん、A社のものも食品添加物が皆無ではない。ただ、B社のそれは圧倒的。オレオレ詐欺を真似ていうなら、「オレ安いよ」詐欺。
 ぼくは迷わず、奥さんの言ったA社のものを買った。安部司著『食品の裏側』(東洋経済新報社)を読んでから、私たち夫婦の買物の仕方はそんなふうに変わった。これは何もごましゃぶタレに限った話ではない。普通のス―パ―でパックで売られている、大手メ―カ―のハムやウインナーの裏書を見てほしい。たとえばカツオエキスとか、なんでハムにカツオやねん!と呆れるようなものが書かれているから。
 先の鉄筋の量を過大申告していた、相場より安い偽装マンションも、その延長線上にある。
 もっと言えば、日本経済の効率主義はいつからかそんな暴走を始めていて、偽装マンションを平気で売ってるヤツらが、一方で添加物まみれの安いごましゃぶタレを買って得したな、とほくそ笑むような状況になってしまった。偽装マンションはバレたが、添加物まみれのごましゃぶタレはまだ知られていないだけ。
 どの添加物がどれだけ危険かなんて、単体でのデータはあっても、それらを複数同時に体内に取り込んだ場合のデータなど存在しないから。目に見えず、じわじわと身体を蝕んでいくからだ。特売セールで売られてる商品なんか、とりわけ危険らしい。
 その片棒担ぎは、そんな変質した効率至上主義企業を、持ち上げるのに忙しい幇間メディアだから、いわば、みんなで仲良く加害者で被害者だ。