スティーブ・ジョブズ『iCon(偶像復活)』

スティーブ・ジョブズ-偶像復活
「カリスマの虚像と実像を追った『非公認』ノンフィクション」―そんなキャッチコピーはけっして針小棒大ではない。破れたジーンズとサンダル、髪の毛はボウボウで、1週間や10日はシャワーさえ浴びなくても平気。おまけに大学中退で学歴なし。そんな若者たちが、世界初のコンピュータ創りに挑んでいく冒頭部分から一気に読ませる。まだ序盤だが、じゅうぶんに面白い。
 ガールフレンドが妊娠してもその責任を取らず、生まれても徹底して認知を拒む厚顔無恥さ。他人の報酬を分捕っても何食わぬ顔でいられる図太さ。ハードの知識はあまりなくても、徹底したユーザー目線で世界初のコンピュータ像を明確に描けるセンス。その理想像に、有無を言わせずに他人を巻き込んでいけるカリスマ性。これぞと思った広告代理店やベンチャーキャピタルの人間には、嫌がられるほど電話をかけつづけて相手を根負けさせて事業パ―トナ―にしてしまう押しの強さ・・・・・・。
 まさに玉石混交のジョブズの人間像を、本人と周辺への精力的な取材から浮かび上がらせている。ゴツゴツとした火山岩みたいな男の灰汁(あく)の強さと、ギラギラとしたエネルギーが行間に満ちている。これは読み応えあり過ぎだぜ。