足が遅く体力のない犬

rosa412006-10-29

 うちの近所から神田川までウォーキングで出て、そこからランニング姿で走った。日曜の昼下がり、花見シーズンでもないから人通りは少ない。予想外にアップダウンもあり、10分も走ると足が張った。ちょうど川も道路でさえぎられたので、ウォーキングに切り替える。15分ほど歩いて、ふたたび神田川ぞいの遊歩道が見えたので、ふたたび10分間走る。ダラダラと続く上り坂にヒィヒィいいながら。
 ウォーキングに切り替え、リュックの中で適度に常温化したスポーツドリンクをグビグビ飲む。うめぇ〜〜〜!永平寺で二泊三日の座禅体験を終えた直後に飲んだ生ビールの、頭のてっぺんから突き抜けそうな旨味(うまみ)を思い出した。その代わり、10分間走3回をウォーキングをはさみながら終えたら、下半身はパンパンになった。
 ご褒美の露天風呂付きのス―パ―銭湯へ。ジェットバスで背中の凝りをほぐす。次に木酢液の露天風呂でボーッとする。阿呆みたいに、蝉の抜け殻みたいに、心の底からボーッとする。すると、不思議なことに、しばらくすると「ああ幸せ」という気持ちがムクムクと腹の底から湧き上がってきた。モノの旨味も幸せも、そうやって捻じ曲げることができる。銭湯を出ると、足腰はずいぶんと軽くなっていた。
 東京マラソンの10キロ部門の抽選に落ちたので、1月に都内のハーフマラソンに出ることになった。3月に落選組で大阪万博ラソン10キロを走る。そのための練習で、なぜかハーフマラソン。おかしい?やっぱり変?まぁ細かい説明は省く。人生そんなアベコベなんてつきもんでしょうがっ。それに目標ができればコツコツやるタイプなので、今日は犬みたいに神田川沿いを走ってみた。ご覧の通り、かなりのヘボヘボぶりだった。
 とりあえず帰る家があるから、野良犬とはいえない。
 けれど週末の、老いも若きも穏やかに散歩してる道を、ヒィヒィいいながら愚鈍な速度で走るオッサンの姿は、さぞかし不様(ぶざま)だったにちがいない。NCAAのテレビCMのお姉さんみたいに颯爽となんて走れない。ただ、見慣れた町並みを自分だけのフィールドにあっさりと変えてしまうことはできる。足が遅く体力のない犬にだってできる。

青い空が見えぬなら青い傘広げて
いいじゃないか キャンバスは君のもの
白い旗はあきらめた時にだけかざすの
今は真っ赤に 誘う闘牛士のように
(中略)
もう自分には夢の無い絵しか描けないと言うなら
塗り潰してよ キャンバスを何度でも
白い旗はあきらめた時にだけかざすの
今の私はあなたの知らない色


「COLORS」より抜粋―宇多田ヒカル『ULTRA BLUE』

ULTRA BLUE

ULTRA BLUE