『木更津キャッツアイ 日本シリーズ』〜ドンブラコ映画のダイナミズム

木更津キャッツアイ 日本シリーズ [DVD] 
 唸った。シリアスな場面のひっくり返し方が、あまりに斬新だったから。何がって?クドカンの脚本のこと。
 岡田准一演じるブッサンが、ユンソナ演じる韓国人ホステスに告白する場面。唐突に韓国語で結婚を申し込むブッサンに対して、ユンソナも思わず韓国語でそれがいかに嬉しいかを長々と一人語りする。めずらしくシリアスな場面かと思われたその瞬間、ブッサンが耐え切れずに大声で叫ぶ。
「ああ、全然わかんねぇ〜!」
 ツボに入った。と同時に、その展開の新しさにグッときてしまった。おそらく、こういう反転する笑いは、さんまにも松本にも作れない。
 けれどストレートな告白場面をも笑い飛ばさずにはいられないのは、クドカンの含羞(がんしゅう)ではおそらくない。彼にとって、それはあくまでカーブやフォークといった球種の違いにすぎない気がする。告白がシリアスのままだろうと笑いに転調されても、その思いをお客に届けるという作業としては同じだから。
 また、その場面が象徴するのは、生真面目さがひょいと反転してオチャラケたり、オチャラケからマジになったりしながら進むこの映画のスタイルそのものだ。フィルムを高速で執拗に逆戻りさせて説明するのも、時空間や感情の狭間を揺れるという点では同じ。このドンブラコな揺れこそがクドカン式エネルギーだ。
 悪ガキどもがその情熱を互いに共有、増幅しながら、平凡な日常をお祭りに変えようとする。その悪戦苦闘ぶりがバカっぽいけれどもパワフル、かつ痛快に描かれている。
 この映画を支持するのは、そういう情熱や絆をスクリーンにしか見つけられない低温な若者たちなのだと思うと、ビデオを観た後は妙に切なくもなる。狂騒あるいは苦悩のどちらにせよ、青春は過剰な季節。その過剰ささえ奪われている時点で、彼らは丸腰のガンマンに等しい。