視る力を鍛える方法(2)

rosa412006-11-10

 村での二日目は午前5時半起床。軽いラジオ体操の後、昨日の背負い子で、下の畑から上の田んぼまで、自家製肥料2袋を上げる。肥料を下ろしてそのまま山へ。雑木林にすでに切り置かれている薪(まき)を下へ下ろすためだ。
 この山が急斜面。昨日の山道以上で、急なところは60度は裕にあるだろう。石を詰めた麻袋や、短い木を横もしくは縦向きにして階段が作られているが、それがない所は昨夜の雨で地面がすべる。すでに上りながら、これは下りが恐いなぁと思う。太いのは重すぎて無理だからといわれて、太い薪2本を下に置き、細そうなものをその上に積んで20本ほどくくる。斜面に尻餅をつく格好でそれを背負おうとしたが、すぐに諦めた。重すぎて、あの急斜面は下れそうになかったからだ。
「切ってまだ間がないから、水分をしっかりふくんでいて重いんだよ」
 ニヤッと笑って、50代の村人は言う。
 そう、見た目はたいした本数じゃないんだ。薪を15本に減らして恐る恐る急斜面を下り終えたら、やっぱり顔じゅう汗まみれだった。昨夜、物珍しさから囲炉裏で10本は燃やした薪のことを思い出して、後悔した。この薪運びを経験していたら、あんなに無造作に燃やさなかっただろう。それは「環境意識」なんて高尚なものでは決してない。あの運搬作業を経験することで芽生えた節度といった方が適切だ。山で暮らすということは、暮らしのそれぞれの場面にそんな発見や学びがある。
 こういう学びの機会を失った人間が、訳知り顔で「地球にやさしい」なんて、良心的なようでいて、じつは傲慢この上ない言葉を平気で弄(もてあそ)んでいる。