NHK「課外授業・ようこそ先輩」〜子どもと大人が抱える「美しい国」の現実

 やっぱり「課外授業」って面白いわ。小学生たちという、ある意味で素直な合わせ鏡を通して、彼らの背後に世の中のあり方がとても鮮明に見えてくる。
 久しぶりに観た今朝放送分は、声優の大山のぶ代さんがゲスト。彼女が母校の小学校を訪ね、小学生たちに自分の好きな世界的偉人を演じさせながら、友達の悩みを受けとめて励ますという趣向。題して「世界偉人サミット」。
 まず興味を引かれたのが、大山さんも指摘していたが、他人を励ますときに、解決策やテクニックだけを口にする子が多かったこと。たとえば、「宿題に手をつけるのがどうしても遅くなる」という悩みに対して、「どっちにしてもやらなければいけないことだから、早めに片付けた方がいい」と励ます。確かに正論だけど、反面とても冷たい。できない相手への想像力や共感という接点がまるでないから。
 これが会社になると「使えないヤツ」になり、友人同士だと「駄目なヤツ」とされて排除、あるいは無視される。わかっていてもできない人間の弱さにこそ目を凝らす。そんな仕草を、子どもも大人も見失っている。そのくせ、弱さをもたない人などいないから、自分の弱さをうまく受けとめられず、いたずらに大きなストレスとして抱えこんでしまう。ストレスの行方は、自己に向って病気になるか、他者に向って不条理な暴力として爆発するかだ。
 あまりに金太郎飴めいた子どもたちに、インタヴューワーがたまらず「友だちと悩みとか話さないの?」と訊ねると、「え〜っ、とくには話さな〜い」と答えている小学6年生の無表情さが心に残った。こういう子たちが、日々忙しげで余裕のない親に話すとも思えないから、当然、いじめでも受けると、彼らはあっけなく四面楚歌な状況に陥ってしまう。
 大人も子どもも表情に乏しく、他人への共感力や想像力に欠け、悩みを打ち明けあう友だちさえいない。2006年末、これが「美しい国」の現実だ。次回はリリー・フランキーで、課題はラブレターらしい。