恍惚のマッサージ

風花抄 
 まず口が開きっ放しになる。顔はゆるんでヘナヘナになり、けっして他人には見せられない。それほどの恍惚感につつまれてしまう。まさに「しまう」という言葉遣い以外にないほどだ。 
 マッサージの話である。走り出してから、ケガ予防にと就寝前の奥さんにマッサージをお願いしている。もちろん、ぼくもお返しを忘れない。これが予想以上に気持ちよくて、すっかり我が家のプレイ?!じゃなくて、就寝前の定番行事になりつつある。ぼくはジョギングした日、彼女はフラメンコかバイトした日。走った後の露天風呂もいいけど、マッサージも負けず劣らずに良い。理想は、先にマッサージをしてあげて身体が温まった後で、してもらうのがいい。ヘナヘナなままで眠りにつければ、ぐっすり眠れる。
 1時間走を達成した夜、自宅風呂に少し長めに入った後、まずはマッサージ機で足裏とふくらはぎを揉みほぐす。この時点ですでに眠気がくる。それから奥さんに肩と腰の上辺りをマッサージしてもらうと、冒頭のごとくヘナヘナになってしまった。走り始めた当初は、背中全体がガチガチに硬くなったみたいで、どこを触られても痛かったけれど、練習を積むほどに筋肉も柔らかくなり、肩と腰の上の背骨周辺以外は、押されてもあまり痛くなくなった。
 ぼくのマッサージのおかげか、速攻で眠ってしまった奥さんの寝息を聞きながら、この夜は白洲正子さんの随筆を少し読んで早めに就寝。普段より1時間多く眠れて、すっきりした目覚めだったが、左足ふくらはぎの上が少し痛いのでサロンパス2枚貼付。43歳の冬である。