カッコイイ大人

 昼間、ポレポレタイムス社本橋成一さんの事務所にお邪魔した。NHKから送られてきた土曜ドラマ「スロースタート」の番組宣伝ハガキを、1Fのカフェにおいてもらうお願いと、ひさびさにお昼ご飯をご馳走になるため。もちろん、食後のドーナツ土産片手にだ。
 ちょうど午後1時からNHK「スタジオパーク」に、水野美紀さんが「スロースタート」の説明もかねてゲスト出演。拙著の画像もかなりアップで放送していただいた。昨年、スタジオ見学させていただいたときはとても普通っぽかったが、今日は女優オーラが出てたなぁ。
 本橋さんは2月にアフリカのセネガルにロケハンに行かれる。おそらく最後のドキュメンタリー映画になるだろう、バオバブの木と人間の暮らしの物語。
 まだ、ぼくが上京したてで、ポレポレタイムス社の新米スタッフだった頃。この若造相手に、バオバブの木の写真集を作りたいんだと、子どもみたいな表情で語ってくれた本橋さんの表情はとてもカッコ良かった。
 ぼくが生まれた1963年のデビュー写真集「炭鉱(ヤマ)」(第5回太陽賞受賞)、「魚河岸ひとの町」、「老人と海」、映画ならチェルノブイリ原発事故以降、放射能汚染で退去勧告が出た村で暮らしつづける人たちを撮った「ナージャ 希望の村」(同名の写真展で第17回土門拳賞受賞)「アレクセイと泉」(ベルリン国際映画祭で国際シネクラブ賞受賞)。その絵画的な構図と温かみのある視線で、普通の人たちの生きる姿がもつ輝きをこそ印画紙やフィルムに記録されてきた方だ。
 あれから18年近くの歳月がすぎて、写真集は映画計画へとふくらんでいる。こういう大人の近くにいられたことを、改めて誇りに、そしてありがたく思う。荒れる子どもや若者たちの周りには、たぶん、ドキドキさせてくれる大人がいないんだ。何か起これば眉をひそめ目をそむけるか、口汚く罵るか、あるいは彼らを極悪人に仕立てて小銭を拾い集める大人たちしか。