音符と歌声の狭間にこそあるもの

 ここ3週間ほど、宇多田ヒカルの『COLORS』という曲をキーボードで練習している。一番新しいCDの中でもお気に入りの曲で、奥さんの友人にもらった楽譜集で見つけたから。ただ、スローテンポから始まり、徐々にテンポアップしていくので難しい。
 数日前のことだ。夕食後に30分と決めて、つっかえつっかえ練習していた。もちろん、右手だけで。4連符が5、6個つづく旋律があって、これが何度練習しても実際の曲のようにアップテンポには弾けなくて、奥さんに質問してみたら、予想外の答えが返ってきた。
「4連符がつづく部分は、楽譜通りに弾けば、全然アップテンポじゃないからいいんだよ。だって、歌声みたいにアップテンポに演奏したら、今度は歌が聞こえなくなるじゃない
・・・・・・なるほどねぇ〜。音楽というのは、音符と歌声の狭間にこそあるもの。なるほどねぇ〜、深いねぇ。ひとりでやたらと感心するオレと、「何感心してんのよ」顔の奥さん。それって、文章でいう「行間」のことやん。
 こんな発見は、ピアノを弾ける人にとっては、ただの「アホか、こいつ」な話でしかないはずだ。
 ただ、ぼくにとっては、CDを聴いてるだけでは死ぬまで気づけなかったこと。ヘタクソなりに、キーボードに悪戦苦闘していて初めて見つけられること。こういう学びの醍醐味は、口では言い表せないほどに深く、まったりとしている。