西村佳哲『自分の仕事をつくる』〜ギョッとするか、ただの「フーン」か

自分の仕事をつくる 
 気に入ったフレーズがあると、その本のページの上隅を少し折る癖がある。16日の日誌で書いた西村さんの本を読み始めたら、たちまち折り目だらけになってしまった。いいモノをつくっている人は、働き方からして違うはずだと考えた西村さんが、気になるモノを作っている職人さんたちを訪ね、その働き方について見聞きした一冊だ。
 やたらと怖い文章が出てくる。読み進めるごとに、今こそ出会うべき本だったという気持ちが深まっている。

 丁寧に時間と心がかけられた仕事がある。素材の旨味を引き出そうと、手間を惜しまずつくられる料理。表には見えない細部にまで手の入った工芸品。一流のスポーツ選手による素晴らしいプレイに、「こんなもんで」という力の出し惜しみはない。
 このような仕事に触れる時、私たちは嬉しそうな表情をする。
(中略)
「こんなものでいい」と思いながらつくられたものは、それを手にする人の存在を否定する。とくに幼児期に、こうした棘に囲まれて育つことは、人の成長にどんなダメージを与えるだろう。
 大人も同じだ。人々が自分の仕事をとおして、自分たち自身を傷つけ、目に見えないボディーブローを効かせ合うような悪循環が、長く重ねられている気がしてならない。

 この文章を読んでギョッとする人もいれば、ただ「フーン」と受け流す人もいるだろう。ぼくはギョッとした。どっちが、いい悪いという話ではない。そういえば、先日もある人から、「荒川さんはすぐに反省しちゃう人だからなぁ」と言われてギョッとした。