結純子ひとり芝居『地面の底が抜けたんです』(日本女子大)〜自らが光となる、という着想 

 結婚直前にハンセン病を発症した、ある女性の生涯をたどった、ひとり芝居を観た。結純子さんのひとり芝居『地面の底が抜けたんです』。藤本としさんの原作地面の底がぬけたんでんす 1―ある女性の知恵の73年史をふまえたものだ。
 後半、ハンセン病が進み視力を失ってからのディテールがすごい。
「身体がだんだん麻痺してきて、皮膚の感覚がなくなるもんですから、這って進んでも手が何かに触れてもわからないんです。ただ、何かに触れた振動が骨を伝わってきて、前に何かがあることがやっとわかるんです」
 家族との30年間音信不通で、痺れて感覚がなくなっていく中、舌が破けるほど点字を学んだこと。あれこれと語られていく。
「でも舌の感覚はかろうじて残っていて、それでどれほど精神的に救われたか知れません。同じように視力を失った主人の入れ歯を、わたしの口の中にいれて、その舌で掃除してあげてから、主人に使わせるんです。そんな生活を彼が亡くなるまで9年間続けました。彼が亡くなるとき、両手を合わせて『お世話になり、ありがとう』といわれたとき、とても報われた気がしました」
 ありとあらゆるものを失ってなお、誰かのために生きた自分への誇らしさを切々と、結純子さんは語る。
「私はずっと闇の中で光を求め歩いてきたのだけれど、それは間違いでした。本当に光がほしいなら、それは自分自身が光になるべきなのです」
 この着想は、自分にも使えそうな気がする。