ギャップに惹かれるオレ

「すぐに御持ちしてもよろしいですか?」
 その意外な一言にハッとさせられた。20代前半の化粧っけのない、ジーンズばきのウエイトレスだった。日曜日のお昼前、夫婦であるカフェに出かけた。ぼくが近所ウォーキングで以前見つけていた洒落たカフェだった。二人でドライカレーを食べた後、デザートを追加注文した際の出来事だ。
 ウエイトレスの彼女は、セットメニューのドリンクが二人とも残っているのを見て、そう確認してきた。いまどきの大抵のカフェなら、そんな確認はまずない。マニュアルめいた接客と、まるで心のこもっていない受け答えに慣れすぎていたせいかもしれない。彼女の見た目とのギャップが何より大きかった。
 まさか、そんな細やかな心配りを感じさせる言葉が返ってくるとは思わなかった僕は、ハッとした瞬間、グッときてしまった。すごいね、ふつうなら何もきかずにデザートを持ってくるでしょ、と奥さんに言った。この店、教育がしっかりしてるねと。ぼくは、そんなギャップにめっぽう弱い。
 そういう意味では、そのお店を気に入る心理は恋愛に似ている。
 接客は駄目だけど、あそこのピザはおいしいから、という店は強い。料理も接客も雰囲気もそれなりにいいんだけどねぇ・・・という店は、リピートする意欲を掻き立てる力に欠ける。恋愛で言う、「いい人なんだけど・・・」というやつだ。文章や映画だって、ただ上手いだけより、心に刺さる一文やワンシーンがあるかどうかがデカイ。
 ぼくが注文したアイスクリームのブルーベリー添えは、予想したものとは違い、逆三角錐状のコーンに入ったソフトクリーム・スタイルで出てきた。蜂蜜入りのバニラでおいしかった、途中まで食べるとコーンフレークが出てきたが、少しも嫌な気分にはならなかった。むしろ、これが商売のコツでしょうと好意的に受けとめた。
 もしや、こんなオレってチョロイ客?