1日200通の「命綱」 

 多いときは1日約200通もメールを出す、という女子高校生の話が新聞に載っていた。彼女には「頻繁にメールする子は友だち関係が幅広い」というイメージがあるという。その反面、同級生からのメールへの返信が遅れると、仲間外れになるんじゃないかと焦る。実際に「おはよう」のメールに返信しなかっただけで、いじめに遭った同級生もいたからだ。
 だからといって、彼女にとってのメールは正直な心情のやりとりでもない。「今起きた」「もう寝る」といった状況報告メールが多かったりする。あるいは本心とは真逆のことでも伝えられる社交辞令でもある。
 しかし、1通でも対応を間違えたり疎かにすれば、友達からシカトされたり、いじめられる原因になってしまう。それは絶え間なく送信し続けなければいけない無数の「命綱」だ。
「メールが多い人は友人関係も幅広い」という短絡は、「給料が多いほど幸福」とか「スケジュール帳がぎっしり埋まってないと不安」という大人にも似ている。目に見えるものの多さでしか満たされない心は、きっと死ぬまで何かに追い立てられなければならない。