桑田真澄39歳、ヤンキース戦でメジャーデビュー〜何の変哲もない言葉の行間 

rosa412007-06-11

 ブラウン管を見ながら、なんかグッときたなぁ。ブルペンから18番の背中が揺れながらマウンドへ向かう姿に、ぼくの心も静かに共振していた。39歳のメジャー挑戦で、なおかつオープン戦で大怪我までして、地道なリハビリを経て実現した登板。誰にでも立てる場所ではけっしてない。
 しかも桑田の投げるボールはとっても遅くて、それでも低め中心のコーナーワ―クと多彩な球種で戦う姿に、ふたたびグッときてしまった。
「今の自分を、目指す夢にぶつけながら生きていくしかない」
 彼が投げる度にそんな声が聞こえてきそうだった。ガキの頃、コンクリートの壁にひたすらボ―ルをぶつけていた頃のことが、なぜか急に思い出された。
 桑田の出足は順調だった。最初は三者凡退。2イニングス目に、ロドリゲスに初球を2点本塁打された。だが打たれた屈辱は、戦う者にしか与えられない。人生、こんなもんさ、とうそぶくヤツは屈辱さえない手にできない。自分のことは棚にあげて、世間に向かって唾を吐きつづけるのがオチだ。
 慰めも同情も理解も、しょせんは何も与えられない。
 人が人に対して何かできるとすれば、自分に与えられた場所で前のめりに戦っている姿を見せることだけだ。「うまく表現できない。うれしい。それしかない」、彼の何の変哲もない言葉の行間は、そういう人間にしかわからない。
「付録」聖地で夢をかなえた桑田