石下理栄写真展『花空の裏庭』(北青山「DAZZLE」)〜腐臭を放つ花々の輝き  

rosa412007-06-15

 重篤患者ばかりを担当するクリティカルケアと呼ばれる看護士がいる。以前、テレビで観た彼女は、まず患者と対面すると相手の手を握る。その理由を問われた際の、彼女の言葉がいまも耳に残っている。
「パワーをもらうんです」
 えっ?とぼくは思った。ベッドの上で死に瀕しているようにさえ見える患者さんと、パワーという言葉がうまく結びつかなかった。だが、彼女の見方はまるで逆。死に瀕しているからこそ、患者たちは懸命に生きようと命を燃やしていて、そのパワーをまず感じることから相手と向き合うんです、と彼女は言葉をおぎなった。
 北青山「DAZZLE」で個展を開催中の友人、石下さんの写真にもそんなエピソ―ドに似た質感がある。いわゆる、きれいなお花はない。枯れた花、爛熟から一転、腐臭を放ち始めた花、散乱する花弁などなど。そういえば、線香花火もポトリと地に落ちる直前にもっとも強く輝く。
●12時から19時までオープン中。今週17日(日曜)が最終日。外苑前交差点すぐ。